抄録
大気汚染濃度の変動特性, 特に空間分布構造の安定性を評価する目的で, 簡易測定法を用いたNO2濃度の稠密調査を1988年2月に10日間実施した。過去4回にわたって行われた同様の調査から得られた変動構造の相互の関係を明らかにするため, 本調査では東京都市部を中心に2kmおきに, またその1部の領域 (杉並区) で1kmおきに地点を設定した。5回の調査結果を日と地点を因子とする2元配置分散分析, medianpolishにより解析し, 調査時期, 領域, 測定地点位置による変動の特徴を調べた。今回の調査から, 日による変動が地点による変動より大きいこと, 日, 地点変動の特徴が気象条件や発生源 (交通量) の分布と関連していること, およびそれら主効果による変動の大きさ, 残差 (交互作用) 変動の大きさが季節により異なることが再確認された。本報では特に空間分布の安定性について検討し,(1) 日×地点交互作用分散はかなり大きく, 日平均濃度の空間分布は季節や気象条件, 調査時期によってかなり異なるが, 1週間から10日間の平均濃度分布は比較的安定していること,(2) 残差変動が大きい地点は, 道路近傍の地点であることが多いこと,(3) 残差変動の大きさの評価は, 標準偏差のみでなく, 分布の裾の広がりを評価する指標が必要であること等が明かとなった。