大気汚染学会誌
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地球温暖化
山本 晋
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1991 年 26 巻 4 号 p. A81-A89

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抄録

二酸化炭素をはじめとするメタン, フロン, 亜酸化窒素などの温室効果ガスの増大による地球温暖化とそれに伴う様々な環境悪影響が懸念されています。最近の観測によれば二酸化炭素濃度は約350ppmで年々1.5ppmの割合で増加しており, メタン, フロン等も増加しています。IPCC (気候変動に関する政府間パネル: 1990年8月) の報告によれば, このままの状態を放置すると, 来世紀には全球平均気温が3℃上昇し, 平均海面は最大1m上昇することになります。気象庁の報告によれば過去100年間の全球平均地上気温は上昇傾向にあり, これは温室効果ガスの増加による気温上昇予測結果と一致しています。しかし, 現段階ではこの気温上昇が温室効果によると断定するにはデータが十分ではありません. また, 現在人類が化石燃料の使用によって放出している二酸化炭素は一年間に炭素換算50億トンです。このうち大気中に残留するのは結果として約半量で, 残りは海洋, 植物などにより吸収されていると推定されていますが, 大気圏, 水圏, 地圏, 植物圏相互間での二酸化炭素の交換過程は定量的に解明されておらず, 二酸化炭素の循環モデルは今後の研究課題として残されています。
温暖化は数十年から百年という長い期間に顕在化する現象であり, 顕在化してからでは対策を立てても遅いということになりかねません。ここでは, 地球温暖化問題を考える上での基礎的知識, 現状での科学的知見について,「温暖化の原因・機構と現状」と「温暖化の将来予測と予想される環境影響」の二回に分けて紹介します。本入門講座が「地球温暖化」問題を理解し, 対策を考える上で多少なりとも参考になれば幸いです。

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