大気汚染学会誌
Online ISSN : 2186-3695
Print ISSN : 0386-7064
ISSN-L : 0386-7064
ジーゼル排出ガス中の粒子成分の肺内注入による肺障害性と肺発癌. 注入粒子量・反応関係について
河端 美則岩井 和郎宇田川 忠樋口 一恵山田 博之高橋 忠治橋本 尚子
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 28 巻 1 号 p. 11-19

詳細
抄録
ジーゼル排出ガス粒子による肺障害性・肺発癌性にかんする量・反応関係を知ることを目的に実験を行った。
小型ジーゼルエンジンから採取した排出ガス粒子の懸濁液を作成し, 各量の粒子をF344雌ラット肺に経気管注入した。1群は0.125mg, 2群は0.5mg, 3群は2mg, 4群は8mg注入であり, 5群は無処置対照とした。4群のみ60匹で他群は50匹を使用した。2年並びに2年6か月後に剖検し病理学的に検索した。1群と2群では極少量の粒子残存のみであり, 粒子残存と関連した炎症性肺病変は見られなかった。3群では少量の粒子が間質に存在し, 一部肺胞腔のMφ 内に存在した。肺の炎症反応は軽度で部分的な現象であり, 肺腫瘍発現の増加はなかった。一方8mgの粒子を注入された4群では56匹中24匹 (43%) に40個の肺腫瘍を認め, 統計的に対照群と3群に比し有意に高率の腫瘍発生をみた。腫瘍の内訳は腺腫12個, 癌28個であった。24か月以降の亜群でも29匹中16匹 (55%) に29個の肺腫瘍がみられ, 時間の経過と共に肺の腫瘍発現率と1匹当たりの腫瘍数の増加を認めた。
ジーゼル排出ガス粒子による肺障害と肺腫瘍発現を再確認し, 同時に過去の実験を含め検討すると, 粒子の肺にたいする影響の量反応関係を確認したと考えられる
著者関連情報
© 大気環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top