大気汚染学会誌
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初冬季に高濃度大気汚染をもたらす関東平野のよどみ構造
吉門 洋
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1994 年 29 巻 6 号 p. 351-358

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抄録

浮遊粒子状物質 (SPM) や二酸化窒素 (NO2) による大気汚染が環境基準を超える日は, 関東平野では初冬季に集中している。その高濃度汚染と結び付いた弱風安定条件の気象構造を1989~1991年の12月について統計的に調べた。
東京都心部の内陸側から埼玉県中央部にかけての広い地域で, SPMの日平均濃度レベルはよく一致する。その地域の中心部でSPM日平均濃度が130μg/m3以上であった日を高濃度日とした。なお, 日々のNO2濃度レベルの高低もSPMのそれと高い相関を持つ (相関係数0.91)。高濃度日は既に前夜以来100μg/m3を下回らない高濃度が続いていることが多く, 一日以上の時間スケールをもつ広域気象条件に支配されて起ることを示している。
高濃度日には上層が通常よりも高温になっているのが特徴的で, 日平均では海抜870mの筑波山と平野面の間の温度差がほとんどない。筑波山の風は, 南西風の場合が多いが, 明瞭でない場合もある。
また, 高濃度日は平野周辺部に比べて2度ほど平野内の冷え込みの度合いが大きく, その領域は広く平野中西部をおおっている。これは盆地などで報告されるいわゆる冷気湖のような構造と考えられる。高濃度日には山沿いでは山谷風, 東京湾岸では海陸風のような風の日変化があるが, 高濃度汚染の起る平野中西部はそれらのはざまに当たり, きわめて風が弱いことがわかった。

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