大気環境学会誌
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スギおよびヒノキの生育と養分吸収におよぼすアルミニウムの影響
河野 吉久松村 秀幸小林 卓也
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1995 年 30 巻 5 号 p. 316-326

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抄録
pH 3.5~4.0に維持した水耕培養液にAlCl3・6H2Oを0.5~20mM添加し, スギとヒノキを4ヵ月間栽培して生育におよぼすアルミニウム (Al) の影響について検討した。
Ca濃度を0.8mMとしてAl濃度の影響を検討した結果, Al濃度が1mM以下では枯死する個体は観察されなかったが, 5mM以上になると枯死率が高くなるとともに, 生育を顕著に抑制することが明らかとなった。個体乾物重量の変化を指標とした場合, 樹種間の差異はほとんど認められなかった。
両樹種とも培養液中のAl濃度が高くなると葉および根のAl含有量は有意に増加したが, 葉のCa, MgおよびP含有量は減少した。Al濃度の増加に伴ってスギの根のP含有量は増加したが, ヒノキでは変化がみられなかった。この結果から, スギとヒノキでは, Pの移行過程に対するAlの影響に差異のあることが推察された。
スギとヒノキの個体乾物重量に有意な影響を与えたAlの最低濃度は5mM (135ppm) で, 草本や作物などで報告されている生育抑制濃度よりも顕著に高いレベルであった。このため, 将来的に土壌酸性化に伴ってAlの溶出影響が考えられるような状況となった場合, 草本植物や作物などの生長に対する影響や植生の変化が顕在化するとともに, スギやヒノキにも影響が顕在化する可能性が示唆された。
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