抄録
本報では, 東アジア地域を対象とした大気汚染物質の排出量推計の第一歩として, この地域最大の排出国であり, 最近では日本への越境汚染の影響が問題となっている, 中国における人為起源硫黄酸化物の排出量推計を行い, 既存の研究による推計結果との比較, 検討を行った。対象年度は1990年とし, 省別, 都市別, 80×80km正方グリッドおよび1°×1°グリッド別に推計を行った。推計手法の特徴としては, これまでの研究成果を総合して, 最も詳しく信頼性が高いと思われる推計を他の汚染物質にも適用可能な形で試みたこと, 更に従来の方法では限界があった脱硫処理が普及した状況に対応した推計手法を用いたことなどが挙げられる。
推計の結果は, 中国全体で21 TgSO2の排出があり, 排出量が最も大きいのは, 燃料別では石炭で全体の約9割, 消費部門別では発電供給部門で全体の3割以上を占めることがわかった。また省別では, 四川, 山東, 江蘇の3省がずば抜けて大きく, 都市別では重慶, 上海, 成都などの排出が大きいことがわかった。