大気環境学会誌
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石材に対する酸性雨の影響評価法の検討
形見 武男高原 康光西川 治光加藤 邦夫
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1996 年 31 巻 3 号 p. 125-131

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抄録

大理石を屋外と屋内に暴露させ, 石材表面の明度および表面粗さを測定して酸性雨の影響を評価する方法を検討し, 次の結果を得た。
屋外に暴露した石材表面の明度は1-3ヵ月程度の短期間に減少し, その傾向は雨水のpH値が低い地点ほど顕著であり, 明度と水素イオン降下量との間には良好な負の相関関係が認められた。
大理石の表面粗さと明度の間には負の相関関係が認められたことから, 石材表面の物理的変化を, 明度という光学的な計測量で評価できることが分かった。
石材の屋内暴露では, 明度を尺度にすれば3-9ヵ月程度で暴露地点間の影響を比較できるが, 表面粗さの尺度では地点間の差の評価は困難であった。
屋外および屋内暴露した石材の明度の減少量から, 雨水に暴露する方が酸性ガス等の大気汚染物質に暴露するより4-11倍も石材の損傷を進行させることが分かった。
以上のことから, 大理石を一定期間屋外および屋内暴露を実施し, 光学的方法である明度を測定して比較する方法は, 比較的短期間に暴露地点における酸性雨の影響を比較する簡便な手法として有効であることが分かった。

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