大気環境学会誌
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主要幹線道路沿道部における大気汚染が学童の呼吸器症状に及ぼす影響
田中 良明仁田 善雄島 正之岩崎 明子安達 元明
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1996 年 31 巻 4 号 p. 166-174

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抄録
自動車排気ガスを中心とする幹線道路沿道部の大気汚染が, 学童の呼吸器症状, 特に気管支喘息に及ぼす影響を明らかにするため, 千葉県で主要幹線道路が学区を貫通する都市部6小学校と田園部4小学校の1992年に1~4年生のものを対象として3年間追跡調査を行った。
気管支喘息有症率は女子では3年間すべてで都市部の沿道部が最も高率であり, 次いで都市部の非沿道部, 田園部の順となり, その傾向は有意であった。男子では2年目のみ有意であった。
2年間の気管支喘息発症率は男子では沿道部5.7%, 非沿道部3.9%, 田園部1.6%, 女子ではおのおの3.3%, 2.5%, 1.0%であり, 男女とも沿道部が最も高く, 次いで非沿道部, 田園部の順となり, この傾向は有意であった。多重ロジスティック回帰により関連要因を調整したオッズ比を求めたところ, 田園部の発症を1とすれば男子では非沿道部1.92, 沿道部3.70, 女子では非沿道部2.44, 沿道部5.97であった。すなわち, 沿道部の大気汚染は気管支喘息の発症に関与していることが疫学的に示唆された。
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