大気環境学会誌
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中国福建省南部における大気エアロゾルの汚染特徴および酸性雨への関与
王 緯坂本 和彦王 文興湯 大鋼杜 漸高 金和
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1997 年 32 巻 3 号 p. 204-215

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抄録

中国では酸性雨と環境の酸性化はますます重要な環境問題となっている。福建省南部における大気汚染は四川省重慶や貴州省貴陽市などの重度大気汚染都市と比較して, それ程厳しくないが, 最近比較的高い降水の酸性化が観測されている。本研究では大気エアロゾルと降水酸性化の関係を検討するために, 福建省南部の廈門市, 泉州市, 章州市の都市地域と田園地域において, 1992年の夏季と1993年の春季に大気エアロゾルを採取し, その物理的ならびに化学的特徴を分析した。それらのデータ解析により, 以下の結果を得た。
1) 中国の他の地域に比べて, 福建省南部での大気エアロゾル汚染レベルはあまり高くなかった。
2) 大気エアロゾル中の水溶性イオン成分の存在割合には独特な特徴があり, NH4+濃度は極めて低く, NH4+/Ca2+濃度比もかなり小さかった。そして, NH4+とSO42-はほとんど微粒子に含まれ, 人為起源が, Ca2+は粗大粒子に多く含まれ, 自然起源が示唆された。
3) 大気エアロゾル中の元素分析結果に因子分析を適用し, 石炭燃焼と土壌, 石油燃焼と自動車排ガス, 建築工事, 海塩粒子などの起源を明らかにした。
4) 他の地域の観測結果に比べて, 本研究地域における大気エアロゾルの酸性度はかなり高く, 酸緩衝能が著しく不足していることが酸性雨形成の原因の一つであると推定された。

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