大気環境学会誌
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大谷石暴露法による丹沢山塊酸性成分の評価
古谷 圭一津越 敬寿工藤 善之小沢 あゆみ
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1997 年 32 巻 6 号 p. 393-403

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抄録

1993年7月より12月 (夏秋期) と12月より1994年5月 (冬春期) まで丹沢山塊の各峰に暴露した大谷石の表面に濃縮された酸性成分 (窒素酸化物, 硫黄酸化物) の半定量的比較を行った。表面の酸性成分の分析はレーザーマイクロプローブ質量分析法を用い, 大谷石からのHSiO3- (m/z=76) に対するフラグメントイオンの強度比を用いて比較を行ったところ, 窒素酸化物について, 夏秋期には丹沢山, 大こうげ, 冬春期には蛭ヶ岳, 檜洞丸では大山下社のそれにほぼ匹敵する量が検出された。また, 硫黄酸化物については, 大山下社のそれに比していずれも低値を示したが, 大こうげ北, モロクボ沢の頭, 小こうげ北, 檜洞丸, 蛭ヶ岳, 鍋割大丸鍋割小丸など大部分の地点での測定値が大山下社におけるそれのほぼ数十%の値であった。檜洞丸と蛭ヶ岳付近を境界としてその南北では大気質が異なる可能性が認められ, 同一峰の南北では北面の方の測定値が有意に高かった。本法は, 従来の銅板や石灰石の暴露に比して, 浸透水が濃縮され, 乾燥に伴って試片表面に酸性成分が析出するため, 土壌に対する酸性成分の影響を評価できる半定性的簡便法として利用が可能である。

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