大気環境学会誌
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32P-HPLC法を用いた人肺組織中のDNA付加体分析
高橋 美保子安達 修一永井 正規大島 晋高濱 素秀Lennart Möller
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1998 年 33 巻 3 号 p. 196-200

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抄録

多環芳香族炭化水素 (PAH) のような環境中の発癌物質はDNA付加体を形成することが知られている。曝露後の主要な標的臓器と考えられる肺組織中のDNA付加体を分析することによって, 肺がんと環境曝露の関係が明確にされるものと期待される。32P-ポストラベル高速液体クロマトグラフィー (32P-HPLC) 法は, 検出感度と分離能に優れるため, 人肺組織中のDNA付加体の分析に有効であると期待される。そこで, 人肺組織分析における32P-HPLC法の有効性を評価することを目的に, 病理解剖11例の肺組織中のDNA付加分析を試みた。各症例のクロマトグラムには, DNA付加体分離後の複数のピークが示された。ピークパターンは症例ごとに異なり, 曝露形態の異なりを示唆するものであった。また, 保持時間56.4分, 62.4分のピークが数例に共通して観察された。これらのピークに曝露物質を対応づけることはできなかったが, このようなピークを持つ症例には共通の曝露物質があったと考えられた。このように, 32P-HPLC法を用いることによって, 人肺組織について, 単に総付加体量 (TAL) だけを評価するのでなく, 環境発がん物質に対する曝露形態の違いを考慮した評価が行えることがわかった。

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