大気環境学会誌
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被験者の逐次嗅力計測に基づく臭気指数校正に関する実験的検討
樋口 能士原口 剛志佐久間 敬子
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2003 年 38 巻 1 号 p. 35-46

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抄録

我が国では, 物質濃度規制を補完する臭気の測定方法として臭気指数規制が導入されているが, 臭気指数測定法 (嗅覚測定法) の精度管理ついては, 現在も継続的に検討が行われている。本研究では, 嗅覚測定法の精度向上を目的に, 独自の臭袋法で標準物質に対する被験者嗅力を測定して臭気指数を校正する手法を提案し, その効果について実験的に検証した。標準物質にはn一ブタノールを用い, 被験者嗅力を測定する修正臭袋法では, 個人嗅覚閾値濃度に基づく個別の初期呈示濃度と嗅覚閾値付近で希釈段階を狭くする不均等な希釈系列を採用した。また, 測定対象とする臭気試料には, トルエン, 酢酸エチル, トリメチルアミン, メチルメルカプタンの4種類を, それぞれ文献で報告されている嗅覚閾値濃度の300倍に調整して使用した。また臭気指数の校正時には, 各被験者の測定結果から「個人嗅力の異常値」および「測定試料と標準試料との感度差の特異値」を削除し, 残る被験者の測定値に対してそれぞれ標準試料に対する個人嗅力に基づいて校正を行い, 臭気指数を算出した。実験の結果, トルエンおよび酢酸エチル臭気の校正は適正であった反面, トリメチルアミン臭気の校正には効果が見られなかった。また, 異常値の削除範囲を適切に設定することによって, より適正な臭気指数を得ることができると考えられ, 被験者嗅力の測定に修正臭袋法を用いることで, 標準的な臭袋法を用いた場合と比較して若干高い校正効果が観察された。

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