大気環境学会誌
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揮発性有機化合物の新規高速分析法
陽子移動反応質量分析計
谷 晃
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2003 年 38 巻 4 号 p. A35-A46

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抄録

低濃度VOCの測定は, 通常, 吸着剤やキャニスターを用いた採取, 濃縮後の熱脱着あるいは溶媒抽出等の特殊な前処理技術と, GC等を用いた時間を要する分析手法を必要とする。また, 濃縮のために大量の試料ガスを必要とするため, 数十分や1時間の平均濃度でしか定量化できず, 環境中でのリアルタイムの変動は測定できない。ところが, 1990年代後半に陽子移動反応質量分析計 (Proton Transfer Reaction Mass Spectrometry, 以下PTR-MSとする) が開発・商品化され, 環境濃度域でのVOCのリアルタイム分析が可能となった。これは, プラズマ放電中にH20蒸気を通してH30+イオンを作り, これを試料気体と反応させることで, 気体中の有機炭素RがRH+として陽イオン化される原理を利用する。プロトン親和力がH30+イオンより高い物質に対しては, 陽子移動反応が起こるため, PTR-MSはメタン等の低級アルカンを除く多種のVOC濃度を測定可能である。測定下限は数十pptで, 最小測定間隔は0. 1秒である。本稿では, PTR-MSに関する原理, 応用例, 問題点や留意点について解説する。

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