大気環境学会誌
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塗装および印刷工程に着目した揮発性有機化合物の成分別排出インベントリの構築とその地域分布解析
馬場 剛南齋 規介田邊 潔神成 陽容森口 祐一若松 伸司
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2003 年 38 巻 5 号 p. 320-338

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抄録

本研究では, 揮発性有機化合物 (Volatile Organic Compounds: VOC) の固定蒸発発生源の中でも排出寄与の高い塗装および印刷工程について, 全国におけるVOC排出量およびその地域分布を推計した。塗装工程からの排出量の推計は, まず, 塗装用途別に各種塗料の生産量を求めた。塗装用途別・塗料種類別の溶剤含有率, 希釈率, 洗浄率と各溶剤中の成分構成比から成分別の溶剤含有量を算出し, 用途別のVOC排出除去率を用いてVOC排出量を導いた。印刷工程におけるVOC排出は, 印刷インキの品目別生産量を推計し, 品目別の溶剤含有率と成分構成比からインキ中の成分別溶剤含有量を求めた。また, インキの希釈剤, 印刷機器の洗浄剤についても同様に成分別の溶剤使用量を推計し, 印刷方法別のVOC排出除去率を乗じてVOC排出量を決定した。VOC排出量の地域分布の推計は, 総排出量を都道府県, 市区町村, 3次メッシュ (約1km×1kmグリッド) 別へと段階的に配分することで推計精度の確保を可能にした。塗装工程からのVOC排出量は8.3×102Gg/yと推計され, 建物塗装による排出が最も大きく2.0×102Gg/yであった。一方, 印刷工程からのVOC排出量は1.8×102Gg/yと推計され, 成分別ではトルエンが24.4%, アルコール類とケトン類がそれぞれ17.2%, 15.6%を占めた。また, 排出分布から, 地域により排出するVOCの成分に有意な違いがあり, 塗装工程は大都市郊外の工業地域からの排出が大きく, 印刷工程は都市型産業であるため都心周辺地域での排出が顕著であることが確認された。

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