大気環境学会誌
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実在幹線沿道の大気汚染濃度分布に関する風洞実験
高架道路の覆蓋影響とストリートキャニオン濃度予測手法の検討
上原 清若松 伸司松本 幸雄山尾 幸夫林 誠司吉川 康雄森川 多津子
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2003 年 38 巻 6 号 p. 358-376

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抄録

実在幹線道路周辺の流れと濃度分布を風洞実験によって調べた結果, 次のことがわかった。
沿道濃度は周囲の建築状況によって大きく変化する。濃度は道路両側 (特に風上側) の建物が高いときに高く, 周囲が開けている場合に低くなる。本事例の場合, 主風向と直交するストリートキャニオンを高架道路が覆蓋することによる地上濃度の増加は大きくない。周囲に大きな建物が無いとき, 高架道路は, その扁平な断面形状のために, 流れを遮蔽するよりむしろ鉛直方向の拡散を抑制する。このために, 道路の汚染は高架道路がないときよりもスムースに風下に流れ出, 風下後背地の濃度はわずかに増加する。
排出源の強度が同じであれば, 地上から排出される場合より高架道路から排出された時の方が, 地上濃度は低くなる。また, 高架道路が地上道路を覆蓋することによる濃度の増加も大きくない。地上高濃度の主たる源である地上交通を高架道路にバイパスさせることによって, 地上の高濃度を低減できる可能性がある。
街区模型を用いた実験においては, ある程度の範囲で道路形状や大気安定度などが変化しても, ストリートキャニオン断面自体の平均濃度によって基準化した濃度分布パターンはほとんど変わらない。実市街地模型内部のストリートキャニオンにおいても, 街区模型のときと同様に, 分布パターンの相似性がおおよそ保たれる。
SRIモデルを改良することによって, ストリートキャニオン内部の濃度を比較的良好に予測できる。

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