2002年2~10月に群馬県のアカマツ林の樹冠上において, 2.5μm以下のNH4+, NO3-, SO42-粒子の鉛直濃度分布を観測した。その結果から, 濃度勾配法により微小粒子の沈着速度を推定した。推定されたNH4+, NO3-の沈着速度には, 夏期に極端な増大傾向がみられた。この要因として, 樹冠直上において大気中のNH4NO3粒子からNH3, HNO3ガスが揮散した影響が考えられた。一方, いずれの成分においても, 地上に近づくにつれてその濃度が増大する負の濃度濃度勾配が観測される場合があった。その要因として, 樹冠直上での新たな粒子の生成が起こったことが考えられた。これらの影響は, 全観測期間の概ね30%で生じている可能性があった。ただし, この期間以外に得られた沈着速度の平均値は, NH4+, 1.30cm s-1, NO3-: 0.84cm s-1, SO42-: 0.84cm s-1であり, その値は欧米の森林において, 野外観測により推定された報告値とほぼ一致した。また, 酸性物質の沈着モデル等に用いられてきた評価式による推定結果と比較した場合には, 3倍程度大き値であった。