大気環境学会誌
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風洞実験による沿道濃度分布の状況把握と高濃度の低減手法の検討
事例研究
松本 幸雄上原 清林 誠司若松 伸司山尾 幸夫
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2005 年 40 巻 6 号 p. 221-237

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抄録

実在する市街地を簡易に再現した模型を用いて風洞実験をおこない, 幹線道路沿道および後背地における大気汚染濃度分布と道路構造や大気安定度との関連を調べた。
対象とした地点では, つたに覆われたフェンスが高架道路の橋脚間に敷設されている。これは沿道高濃度を植物の大気浄化作用によって低減することを目指したものであるが, 実際には高架道路下の自然の通風を阻害するため, 逆に濃度を増加させているのではないかと懸念されている。本実験では幹線道路内部と後背地における濃度分布を詳細に調べ, 先に述べたフェンスの濃度分布に及ぼす影響と, 沿道の高濃度を低減する手法について検討した。
主な結果は以下のとおりである。
1) 本実験の範囲内では, 高架道路上から排出された大気汚染物質が地上濃度に及ぼす影響は少ない。
2) 沿道内部の濃度分布は, たとえば高架道路や高架道路橋脚間のフェンスの有無など, 道路構造によって大きく変化する。しかし, 後背地濃度に及ぼす影響は道路からの距離が増すほど減じる。
3) 大気安定度が沿道大気汚染濃度に及ぼす影響は大きい。また, 後背地濃度に及ぼす影響も幹線道路からの距離が増すほど大きくなる。
4) 高架道路の橋脚間に設置されたフェンスは, 沿道の自然通風を妨げ局所高濃度を生じる原因となる可能性がある。
5) 地上交通を高架道路上に誘導することによって, 地上高濃度を低減できる可能性がある。

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