本研究は,2019年の日本心理臨床学会第38回大会における自主シンポジウムを基に,臨床心理士の資格をもつ教師の活動の可能性を明らかにすることを目的とした。シリーズ5回目となる本年度は「困難事例への対応」をテーマに,困難事例をリフレクション(省察)することを通して議論をした。その結果,教師が臨床心理学を学ぶことによって,子どもの行動の背景にある心理を想像し,それを言語化しながら,関係性の中で指導ではなく共に考える姿勢が生み出されたことが明らかになった。また,困難事例の対応には,包括的なアセスメント,チームアプローチ,保護者との連携協働,教室内でできる予防・対応策の準備が重要であることなどが明らかになった。