棚田学会誌
Online ISSN : 2758-4364
Print ISSN : 2436-1674
論文
長野県千曲市姨捨棚田における複数顕彰への対応と課題
内川 義行堀田 恭子
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2023 年 24 巻 p. 26-35

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抄録
 つなぐ棚田遺産、重要文化的景観などの棚田における各種の顕彰は、多様な価値を広く地域内外に認識させるとともに、その活用による地域活性化の可能性を高める。一方、顕彰を受ける場合、活用施策は農業・文化・観光等多岐にわたるものを統一的に実施することで期待される効果は向上する。しかし行政担当部局や関係者も複雑化すること もあり、総合的施策の立案・実施の難しさが指摘される。にもかかわらずこうした視点での研究は少ない。本論文では、全国でも有数の複数顕彰を受ける長野県千曲市姨捨棚田を対象に、その対応の現状を組織体制や活動内容の概況から明らかにした。この結果、棚田への取組みで先行する当該地域においても、行政の施策の総合化には苦慮しているとともに、棚田保全の根幹でもある耕作継続への直接的な対応には課題があることが示唆された。また、新たな地域のマネジメントには地域住民の活力が不可欠であること、さらに、根本的課題としては顕彰により個人所有地を保全する方策そのものの検討も求められていることを指摘した。
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