抄録
棚田地域振興法が施行され、2025(令和7)年度には5年の延長が決まった。同法により多くの棚田地域の活性化が期待される一方、これに関する調査研究は事例報告がわずかにある程度でほぼ見られない。そこで、本論文では、(1)棚田地域振興法のスキーム再確認と施行後の全国概況、(2)活動計画書の認定数が全国でも多い長野県を対象に、計画認定地区における棚田団地の特徴把握、(3)計画書の活動内容の検討・分析、(4)計画策定における課題を明らかにし考察・整理することを目的とした。その結果、長野県の協議会の設置を指定地域と棚田団地の数の組合せから3パターンとして示した。また複数の棚田団地を含む協議会では、団地規模や区画面積、区画形状、耕作主体の組合せに多様な状況があることを示した。一方、各協議会が策定する計画書では、その多様性は必ずしも十分に配慮されず、結果として本来活用可能な9省庁41事業ある財政支援メニューの利用は極めて限定的であった。同法が目指す棚田地域を農業という産業面だけでない形で維持保全することや、棚田を核とした地域振興、そのために関連府省庁による多様な財政・人的支援を受けるという点では、課題と考えられた。そこでこれらを踏まえ、棚田団地の特性に基づく保全のための類型(①営農型、②他産業型、③産業選択可能型、④耕作維持型)を試論として提示した。