胆道
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総説
内視鏡的乳頭切開術と内視鏡的乳頭拡張術の長期成績
阿部 展次杉山 政則鈴木 裕跡見 裕
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2010 年 24 巻 1 号 p. 82-86

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抄録

要旨:内視鏡的乳頭括約筋切開術(endoscopic sphincterotomy:EST)と内視鏡的乳頭バルーン拡張術(endoscopic papillary balloon dilation:EPBD)後の乳頭・胆道機能変化の観点を踏まえて各々の長期成績に関してレビューした.
EST後には大多数の症例で乳頭基礎圧は消失するが,切開長が短いなどの一部の症例では乳頭収縮波の残存や回復が期待できる.胆嚢運動機能は,EST後長期にわたり,治療前と比べ空腹時胆嚢容積は減少し,胆嚢収縮率は増加する.EST後の胆管・胆嚢胆汁は多くは細菌陽性となるが感染は稀である.また,EST後では一過性に膵管胆管逆流がみられるが,遠隔時には消失する.一方,EPBDでは,早期に乳頭機能や胆嚢運動機能は回復し,十二指腸胆管逆流はESTよりはるかに軽度であると考えられる.
胆管結石再発率や胆管炎発症率は,EST後では各々5.8~24%,5.8~9.7%(いずれも10年以上経過例),EPBD後では7.1~13.5%,0.9~2.2%(4.4年以上経過例)とされる.EST後の急性胆嚢炎の頻度は有石胆嚢例では10~15%,無石胆嚢例ではほぼ0%である.EPBD後では,ESTよりも明らかに低率(2.2~3.4%)であり,その多くが有石胆嚢例である.胆道癌の発生頻度はEST後では0~0.6%,EPBD後では0~0.2%と低く,両乳頭処置と胆道発癌との関連は否定的と考えられる.

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© 2010 日本胆道学会
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