胆道
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原著
  • 北郷 実, 宇田川 大輔, 阿部 雄太, 長谷川 康, 堀 周太郎, 田中 真之, 中野 容, 尾島 英知
    2026 年40 巻2 号 p. 159-164
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/05/31
    ジャーナル 認証あり

    2021年,胆道癌取扱い規約は第7版に改訂され,遠位胆管癌のT分類は従来の解剖学的深達度から,癌の浸潤の深さ(depth of invasion:DOI)または腫瘍厚(invasive tumor thickness:ITT)に基づく実測長に変更された.本研究では,当科で遠位胆管癌の手術を行った45例を対象に,第7版のT分類を第5版または第6版と比較し,その妥当性を検討した.その結果,第7版ではT1およびT2に分類される症例が増加し,DOIまたはITT<5mmであってリンパ節転移を伴う症例においても,良好な5年生存率が得られた.これは,従来の深達度分類よりもDOIやITTに基づく分類が腫瘍の進展度と予後をより適切に反映していることが示された.DOIやITTのいずれも予後予測因子として有用であり,第7版T分類の妥当性が示唆された.

  • 伊藤 聡司, 奥薗 徹, 斉藤 宏章, 冨樫 純一, 中村 里紗
    2026 年40 巻2 号 p. 165-174
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/05/31
    ジャーナル 認証あり

    急性胆嚢炎の標準治療は胆嚢摘出術だが,全身状態不良例では胆嚢ドレナージが選択される.超音波内視鏡下胆嚢ドレナージ(EUS-GBD)は内瘻化が可能な点で有用であり,当院では自己拡張型金属ステント(SEMS)を主に用いてきた.しかし長期留置に伴う断裂・迷入・十二指腸潰瘍瘢痕狭窄の晩期偶発症を経験し,EUS-GBD後2カ月を目安にプラスチックステント(PS)へ待機的に交換することとした.2016年8月~2024年10月にEUS-GBDでSEMS留置成功46例を対象にPS交換群19例と非交換群27例を後方視的に比較した.晩期偶発症はPS交換群で0%,非交換群で6例(22.2%)発生し(p=0.028)内訳は逸脱3例,断裂1例,迷入1例,十二指腸潰瘍瘢痕狭窄1例であった.EUS-GBDでのSEMS長期留置は晩期偶発症のリスクがあり,PSへの交換を積極的に検討すべきである.

総説
  • 柴田 龍弘
    2026 年40 巻2 号 p. 175-183
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/05/31
    ジャーナル 認証あり

    胆道がんは,日本を含むアジアで多くみられるがんの一つであり,本邦における5年生存率は15%以下と,膵がんに次いで予後不良ながんである.これまで十分な分子遺伝学的検討がなされていなかった胆道がんについて,近年複数のグループから大規模なゲノム解析が報告され,ドライバー遺伝子は部位ごとあるいは症例ごとに多様性を示すことが明らかとなった.すでに日本あるいは米国で治療薬の承認が進んでいるFGFR2融合遺伝子やIDH1に加え,HER2,KRAS,BRAFといった治療標的となるドライバー遺伝子が同定され,胆道がんの治療戦略はゲノム異常に基づく個別化医療へと大きく変化しつつある.本稿では,胆道がんにおけるドライバー異常と,それを標的とした主な治療薬開発の現状について概説する.

症例報告
  • 佐藤 英昭, 石田 晶玄, 青木 修一, 伊関 雅裕, 三浦 孝之, 前田 晋平, 水間 正道, 村上 圭吾, 粂 潔, 古川 徹, 正宗 ...
    2026 年40 巻2 号 p. 184-190
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/05/31
    ジャーナル 認証あり

    背景:胆嚢内乳頭状腫瘍(Intracholecystic papillary neoplasm;ICPN)は胆嚢癌の前癌病変と理解されており,切除が推奨されるが,その具体的な術式に定まった見解はない.我々はICPNに対し,腹腔鏡下胆嚢床切除を行なった症例を経験した.

    症例:70代の女性.腹部造影CTで胆嚢腫瘍を指摘された.胆汁細胞診では悪性所見を認められなかったが,胆嚢癌が強く疑われたため,腹腔鏡下にリンパ節切除を伴う胆嚢床切除を施行した.病理学的診断では,胆嚢腺筋腫症を背景に発生したICPN(pTis,N0,M0)と診断された.術後経過は良好で,合併症なく退院となった.

    結語:ADMを背景に発生したICPNに対し,腹腔鏡下胆嚢床切除を施行した1例を経験した.

  • 岡 義人, 清水 宏明, 野島 広之, 碓井 章大, 森 幹人, 小杉 千弘, 藤野 節, 山﨑 一人, 首藤 潔彦
    2026 年40 巻2 号 p. 191-197
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/05/31
    ジャーナル 認証あり

    症例は80歳の男性.皮膚黄染を主訴に近医を受診.CTにて胆管癌が疑われ,当院を紹介された.CTでは左右肝管合流部直下から胆嚢管合流部までの胆管に造影効果を伴う壁肥厚を認め,さらに胆嚢底部に肝浸潤を伴う胆嚢腫瘍を認めた.MRCPでは,膵・胆管合流異常は認めなかった.ENBDからの胆汁細胞診はClass Vであった.以上の所見から,進行胆嚢癌と肝門部領域胆管癌の重複癌と術前診断した.門脈右枝塞栓術を施行し,その4週後に右肝切除,尾状葉切除,肝外胆管切除術を実施した.術後の病理組織学的所見では胆嚢癌の組織型は粘液癌,肝門部領域胆管癌の組織型は中分化型腺癌であり,それぞれ独立した原発腫瘍であることが示された.No. 13リンパ節に胆管癌の転移を認めたが治癒切除(R0)が得られた.膵・胆管合流異常を伴わない胆嚢癌と胆管癌の同時性重複癌は極めて稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 中岡 和徳, 大野 栄三郎, 山田 勢至, 田中 浩敬, 河村 岳史, 葛谷 貞二, 宮原 良二, 橋本 千樹, 廣岡 芳樹
    2026 年40 巻2 号 p. 198-205
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/05/31
    ジャーナル 認証あり

    75歳女性.C型慢性肝炎に対しレジパスビル/ソホスブビル治療でSVR達成後9年間経過観察中,肝細胞癌疑いで紹介となった.造影CTで胆嚢から肝内に連続する腫瘤と多発リンパ節腫大を認め,FDG-PET/CTで集積を認めた.肝腫瘍生検では中~大型腫瘍細胞の増殖と壊死を認め,synaptophysin・CD56陽性,chromogranin A一部陽性,Ki-67>50%よりlarge-cell神経内分泌癌と診断した.etoposide+cisplatinを4コース施行し,原発巣・リンパ節病変は画像上完全奏功(CR)となり,治療終了後30カ月間CRを維持している.NECではソマトスタチン受容体シンチグラフィー陰性例が多いが,本例はKrenning3の集積とSSTR2陽性が一致していた.高増殖能胆嚢NECにおいてもSSTR発現保持例が存在し,EP療法により長期CRが得られる可能性を示した1例である.

  • 河合 修作, 小森 充嗣, 片山 雅貴
    2026 年40 巻2 号 p. 206-210
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/05/31
    ジャーナル 認証あり

    症例1:76歳男性,無石性胆嚢炎に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術後8カ月で閉塞性黄疸を発症し,精査後に遠位胆管癌と診断した.膵頭十二指腸切除術を施行し,病理検査で遠位胆管に進展する胆嚢管癌と診断した.症例2:80歳男性,無石性胆嚢炎に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し,切除標本の胆嚢管から胆嚢頚部に腫瘍性病変を認めた.病理検査で胆嚢管癌と診断し,胆嚢管断端への浸潤を認めたため,胆嚢管追加切除+領域リンパ節郭清を行った.症例3:82歳男性,無石性胆嚢炎に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術後4カ月頃から高アミラーゼ血症を認め,精査後にBismuth I型の肝門部胆管癌と診断した.肝外胆管切除術+領域リンパ節郭清を行い,病理検査で胆嚢管へ浸潤する肝門部胆管癌と診断した.無石性胆嚢炎では悪性腫瘍併存の可能性を念頭において術前精査・加療を行い,原因が判明しなかった症例には術後の慎重な経過観察が必要であると思われた.

  • 山下 麗香, 二川 康郎, 安田 淳吾, 坂本 太郎, 岡本 友好, 池上 徹
    2026 年40 巻2 号 p. 211-217
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/05/31
    ジャーナル 認証あり

    症例は61歳男性.右側腹部痛を主訴に紹介受診となった.来院時右季肋部に圧痛を認め,血液検査所見はWBC 10,700/μL,CRP 0.52mg/dLと軽度の炎症所見以外異常所見は認めなかった.腹部CTで胆嚢周囲の軽度脂肪織混濁を認め,急性胆嚢炎の疑いと診断し保存的治療とした.アセトアミノフェンで鎮静化した疼痛が再燃増強し,腹膜刺激症状と筋性防御が生じた.再施行したCTで肝周囲を中心に腹腔内全体に腹水貯留を認め,緊急で審査腹腔鏡の方針とした.術中所見は肝周囲中心に腹腔内に胆汁貯留と胆嚢底部に穿孔部を認め,胆汁漏出による胆汁性腹膜炎と診断した.腹腔鏡下胆嚢摘出術,洗浄ドレナージ術を施行した.術後経過は良好で術後7日目で退院した.病理検査は特発性胆嚢穿孔の診断であった.特発性胆嚢穿孔は稀な疾患であるが,上腹部痛の患者に対し胆嚢穿孔による胆汁性腹膜炎も鑑別の一つとして考慮する必要があると考えられた.

エキスパート・レクチャー
  • 田代 良彦, 青木 武士, 冨岡 幸大, 松田 和広
    2026 年40 巻2 号 p. 218-222
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/05/31
    ジャーナル 認証あり

    本邦で最も普及している低侵襲手術である腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)は,技術革新により高精細画像下での精緻な手術操作が可能となったが,胆道損傷の報告例はいまだに認める.術中胆道走行を正確に把握する方法として,ICG蛍光法による胆道造影は,術中ナビゲーション技術として簡便かつ高感度に肝外胆管を明瞭に描出し,本邦では保険収載に至っている.現在,術中解剖誤認を要因とする胆道損傷防止にさらなる新規技術が期待されている.これまで教室では,ICG蛍光法に加えて,発展目覚ましい人工知能(AI)技術を利用した術中ナビゲーション手術の開発に積極的に取り組み,より精緻な手術の実現を追求してきた.本稿では,ICG蛍光法による胆道造影の有用性に加えて,AIを利用した次世代LCについて紹介する.

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