胆道
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ガイドライン
第60回日本胆道学会学術集会記録
日本胆道学会認定指導医養成講座
  • 金井 雅史
    2025 年39 巻2 号 p. 159-163
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/05/31
    ジャーナル 認証あり

    2014年に抗PD-1抗体薬のニボルマブが悪性黒色腫に承認されて以降,免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の臨床開発が急速に進み,がん薬物療法の標準治療がICIベースのレジメンに次々と塗り替えられている.胆道癌においても2つの国際共同第III相試験(TOPAZ-1とKEYNOTE-966試験)で従来の標準治療であるゲムシタビン+シスプラチン(GC)にICIを併用することの有用性が示され,GC+ICIが新たな標準治療として確立された.一方,ICIの投与に際しては免疫関連有害事象(irAE)のマネジメントが求められる.第III相臨床試験で報告されているグレード3以上のirAEの頻度は2~7%程度と高くない.しかし実地臨床においてirAEに遭遇する頻度はこれより高くなることが予想され,ICI投与中の患者の有害事象にはirAEを想定した対応が求められる.

  • 中川 圭
    2025 年39 巻2 号 p. 164-172
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/05/31
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    本邦では切除可能肝門部領域胆管癌の標準的治療は根治手術とS-1補助化学療法となった.切除可能かの判断には腫瘍因子のみならず宿主因子評価が必要で,特に腫瘍進展の読影と安全性への深慮が欠かせない.肝門部領域胆管癌の肝切除では動脈・門脈・胆管の切離線が異なる.手術手順をどのように進め,適切な肝切離面に導くかを予測し丁寧に実行する必要がある.要点を症例動画を提示し解説する.重篤な合併症が多く発生し,術後死亡率も高い傾向にある.ドレナージ排液や動脈・門脈・静脈血流の綿密な観察が合併症の重篤化回避につながる.切除不能胆道癌では近年治療選択肢が増え,これらの治療が長期間奏効した症例ではConversion切除も検討される.ハイボリュームセンターで集積された診断・治療のノウハウを汎用化することが根治性と安全性を両立した肝門部領域胆管癌の切除適応を示すために必要である.

  • 伊佐山 浩通
    2025 年39 巻2 号 p. 173-178
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/05/31
    ジャーナル 認証あり

    研究活動に対する社会の目は年々厳しさを増しており,倫理違反(ミスコンダクト)があると論文が撤回され,社会から批判されてしまう.文部科学省,日本医療研究開発機構(AMED)などでは責任ある研究活動に関するガイドラインを,日本医学会では医学雑誌編集ガイドラインをホームページ上に記載しているので参考とされたい.研究活動に関するミスコンダクトには,捏造,改ざん,盗用・剽窃などがあり,出版に関しては重複投稿・出版,サラミ出版,ハゲタカジャーナルなどがある.少しでも心配な時には投稿時にカバーレターにその旨を記載して,編集委員会の判断を仰ぐ必要がある.オーサーシップに関しては著者となるための資格が明確化されており,それに違反したギフトオーサー,ゲストオーサー,ゴーストオーサーなどのミスコンダクトがある.出版を含めた研究活動は社会に対して責任を持っていることを認識し,期待を裏切らないように心掛けて頂きたい.

原著
  • 野瀬 賢治, 山田 玲子, 中川 勇人
    2025 年39 巻2 号 p. 179-188
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/05/31
    ジャーナル 認証あり

    術後再建腸管を有する胆道疾患に対するERCPとInterventional EUS(I-EUS)の選択基準は未だ明らかではない.胆道再建を伴わない術後再建腸管の胆道疾患に対する直近5年間のERCPとI-EUS関連の各々の成績を後方視的に調査した.ERCPは67症例,I-EUSは14症例であった.ERCPとI-EUSの手技成功率は83.6%(56/67)と92.9%(13/14),偶発症率は各々11.9%(8/67)と7.1%(1/14)であり,有意差は認めなかった.総処置時間中央値はERCP 105分,I-EUS 51分であり,I-EUSで有意に短い結果であった.胆道再建を伴わない術後再建腸管の胆道疾患に対して,I-EUSはERCPと同等の成功率と安全性を示し,処置時間の短縮という利点も示された.

  • 旭吉 雅秀, 七島 篤志, 佐藤 勇一郎
    2025 年39 巻2 号 p. 189-195
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/05/31
    ジャーナル 認証あり

    膵頭部に腫瘤を形成して術前に膵頭部癌と診断した遠位胆管癌症例(Pre-Pancreatic ductal adenocarcinoma:Pre-PDAC群)について,通常の遠位胆管癌(Bile duct cancer:BDC群)との相違を膵頭部癌を含めて検討した.69例の遠位胆管癌中,54例(78.3%)に根治切除として膵頭十二指腸切除術を施行した.切除症例の中でPre-PDAC症例は9例(16.7%)あり,その生存期間中央値は20.9カ月で,BDC群の106.8カ月と比較して不良であり,非切除症例の12.0カ月,膵頭部癌症例の32.9カ月と変わらなかった.2年の無再発生存割合は,BDC群の60.0%に対して,Pre-PDAC群は25.0%と有意に低下しており,肝転移再発を多く認めた.

総説
  • 金井 雅史
    2025 年39 巻2 号 p. 196-202
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/05/31
    ジャーナル 認証あり

    がんゲノムプロファイリング(CGP)検査が2019年6月に保険適用となってから5年が経過した.この5年間でがんゲノム医療を取り巻く環境も変わり,現在は血液検体を用いるリキッドバイオプシーを含め5種類のCGP検査が保険適用となっている.CGP検査後に治療に到達できる患者の割合はまだ限られているが,胆道癌ではCGP検査で治療薬と紐づくdruggableバリアントが見つかる確率が他のがん種に比べて高く,欧州臨床腫瘍学会では切除不能胆道癌に対しCGP検査をルーチンで実施することを推奨している.現在国内において胆道癌に対し6つのバイオマーカー(FGFR融合遺伝子,MSI-H,BRAF V600E,TMB-H,NTRK融合遺伝子,RET融合遺伝子)とそれに紐づく薬剤が保険適用となっているが,今後もゲノム情報に基づく薬剤が増えることが期待されている.

  • 藤澤 聡郎, 伊佐山 浩通, 髙橋 翔, 髙崎 祐介, 冨嶋 享, 石井 重登
    2025 年39 巻2 号 p. 203-210
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/05/31
    ジャーナル 認証あり

    近年ではEUSの技術とデバイスの進歩により,胆道疾患に対するEUSガイド下胆道ドレナージ術(Endoscopic ultrasound-guided biliary drainage:EUS-BD)やEUS下針生検(EUS-FNA/B)の導入が進んでいる.特に,EUS-BDは,ERCPが困難な症例に対しても有効であり,ERCPと並んで今後の胆道ドレナージの標準治療として期待される.本総説では,日本消化器内視鏡学会が提案する“EUS関連手技の分類と用語”を紹介し,5つのカテゴリーに分けられたそれぞれの手技の特徴について概説する.続けてEUS-BDに焦点を絞り,手技を安全に施行するうえで重要な技術的工夫や,新しいデバイスを主な偶発症別にまとめて紹介する.最後に内視鏡的胆道ドレナージに対する評価方法の標準化に関して提案している“改訂版TOKYO criteria 2024”の内容を特にEUS-BDに関連する内容に関して説明する.手技の用語や評価項目を統一することにより,研究間でデータの比較が容易になり,胆道疾患におけるEUS関連手技が今後さらに発展することを期待している.

症例報告
  • 吉住 有人, 羽鳥 隆, 坂本 敏哉, 宮崎 勝, 篠田 昌宏, 藤原 弘毅, 石井 研, 永井 奎毅, 相田 真介, 東郷 剛一
    2025 年39 巻2 号 p. 211-219
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/05/31
    ジャーナル 認証あり

    症例は66歳,女性.11年前に胆嚢ポリープを指摘され経過観察されていたが,増大傾向を認めた.超音波内視鏡検査では胆嚢頸部に有茎性で11mm大の乳頭状の隆起性病変を認め,病変内部には高エコーが散在していた.コレステロールポリープを疑ったが典型的所見ではないこと,大きさが10mm以上で悪性を否定できないことから腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.胆嚢頸部に10×7×5mm大の有茎性の隆起性病変を認め,病理組織検査では狭い血管線維間質を軸にして,円柱状上皮が乳頭状に増殖していた.核は紡錘形で基底側に配列されており低異型度の胆嚢内乳頭状腫瘍(intracholecystic papillary neoplasm:ICPN)と診断した.ICPNは前癌病変であり,多くの症例で浸潤癌を併存するため自験例のような癌併存のないICPNは極めて稀で,良悪性の鑑別診断が困難である.貴重な1切除例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

  • 三浦 聖子, 上田 順彦, 宮田 隆司, 山形 光慶, 野村 匡晃, 向井 強, 山田 壮亮
    2025 年39 巻2 号 p. 220-228
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/05/31
    ジャーナル 認証あり

    症例は73歳,男性.4年前に胆石胆嚢炎に対して腹腔鏡下胆摘術を受けた.病理では悪性所見はなかった.今回,大腸腫瘍の精査中にPET-CTで胆嚢手術部にFDGの集積を認めた.胆嚢管閉鎖部の金属クリップから胆管合流部までの遺残胆嚢管に一致して濃染される軟部陰影を認めた.腫瘤は肝S5に浸潤していた.遺残胆嚢管癌を疑い,肝外胆管切除,S5部分切除,リンパ節郭清を施行した.切除標本では胆管粘膜面に異常はなく,胆嚢管開口部には腫瘤は認めなかったが,その奥は閉塞していた.割面では肝臓との境界が比較的明瞭な22×20mm大の粘液性腫瘤を認めた.病理では遺残胆嚢管粘液癌と診断された.またpStageIIIAで治癒切除であった.術後放射線療法とS-1の内服で5年無再発生存中である.

  • 宮崎 大貴, 室屋 大輔, 緑川 隆太, 福冨 章悟, 中山 正道, 橋本 和晃, 新井 相一郎, 後藤 祐一, 赤司 昌謙, 酒井 久宗, ...
    2025 年39 巻2 号 p. 229-236
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/05/31
    ジャーナル 認証あり

    症例は82歳女性.腹部違和感に対する腹部超音波検査で肝外側区域に腫瘤を指摘され,造影CT検査で内部に造影される結節を伴った40mmの嚢胞性病変を認めた.造影超音波検査のKupffer imagingにて結節に連続する肝実質の一部は欠損像を呈し,造影CT検査で遅延性に造影され,MRI検査で拡散の制限を認めた.PET-CT検査では同部位にのみ集積を認めた.嚢胞腺癌の診断で,腹腔鏡下外側区域切除を施行した.病理検査では1型の胆膵型IPNBで,PET検査で集積を認めた肝実質に浸潤している所見であった.1年後リンパ節転移を切除し,再手術後10カ月経過時点で無再発経過観察中である.嚢胞内に造影される結節成分を認めたため嚢胞腺癌と術前診断したが,術後病理検査で肝内末梢胆管に発生した1型胆膵型IPNBと診断され,間質浸潤を伴ったまれな症例を経験したため,画像提示と共に報告する.

  • 井上 薪, 中路 聡, 西脇 拓郎, 船登 智將, 吉村 茂修, 白鳥 俊康
    2025 年39 巻2 号 p. 237-242
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/05/31
    ジャーナル 認証あり

    症例は75歳女性.胆嚢腺腫に対して腹腔鏡下拡大胆嚢摘出術後に門脈血栓症を合併し,抗凝固剤内服にて経過観察されていた.術後約2カ月,血性嘔吐を主訴に救急搬送された.造影CTでは活動性出血を示唆する所見は認めなかったが,肝門部胆管周囲の海綿状血管増生と総胆管周囲に発達した側副血行路を認めた.上部消化管内視鏡検査では,乳頭部から少量の血液の流出が確認され,胆道出血を疑い,ERCPを施行した.胆管内に造影カテーテルを挿管したところ多量の鮮血が排出された.胆管造影では,胆管周囲の側副血行路が描出され,胆管静脈瘤出血と診断した.出血点の同定は困難であったが,圧迫止血目的にfully-covered self-expandable metal stentを留置し止血を得ることができた.胆管静脈瘤出血は稀な病態であるが,門脈圧亢進症を背景とする場合には,その存在を念頭において治療に臨む必要があると思われた.

  • 納所 洋, 今治 玲助, 尾山 貴徳, 渡邊 日向子, 住田 桃子, 塩崎 滋弘, 松川 啓義, 吉本 匡志, 平尾 謙, 河原 聡一郎
    2025 年39 巻2 号 p. 243-248
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/05/31
    ジャーナル 認証あり

    肝内胆嚢および胆嚢管合流異常のために,間欠的な右肝管通過障害と胆管炎症状を反復する稀な病態を経験した.症例は15歳男性.現在までに10年近く腹痛を反復していた.血液検査で肝胆道系酵素および炎症反応上昇あり,肝内胆嚢および胆嚢管合流異常の疑いはあるが原因の特定に至らなかった.

    腹痛発症直後の腹部超音波検査で,胆嚢腫大と隣接する右肝管の狭窄,肝内胆管拡張を認めた.磁気共鳴胆道膵管撮影で肝内胆嚢および胆嚢管合流異常が疑われた.内視鏡的逆行性胆管膵管造影では胆嚢管は前後区域枝分岐部付近に合流しており,右肝管が広範に胆嚢と接していた.胆嚢への造影剤注入により右肝管の圧迫による狭窄が出現した.狭窄が合流部より中枢側のため胆汁鬱滞が遷延すると推定した.手術は腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った.胆嚢管の処理時にインドシアニングリーン(ICG)蛍光法で胆管造影し安全性を担保した.術後は症状の再燃を認めていない.

  • 加藤 健人, 松村 和宜, 杉本 曉彦, 稲富 理, 佐藤 朝日, 山中 健也
    2025 年39 巻2 号 p. 249-258
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/05/31
    ジャーナル 認証あり

    症例は40歳女性.黄疸にて当院へ紹介となった.造影CT,MRCPにおいて肝内胆管から肝門部領域胆管,膵上縁の遠位胆管まで広範に腫瘍を認めた.POCSでは肝門部領域の腫瘍は胆管内腫瘍栓様の形態を呈し,造影MRI検査を踏まえて胆管内に限局した腫瘍と判断し,右肝切除術+肝尾状葉切除術+胆管切除術を施行した.病理組織では肝内胆管後区域枝から発生した腫瘍が肝門部領域胆管内まで鋳型状に増生し,腫瘍栓様発育を呈していた.大型胆管内腔を篩状,管状に増殖する腫瘍細胞は,MUC1陰性,MUC5AC弱陽性,S100P陰性でCRP染色は陽性を示し,胃型の2型IPNBと診断した.肝内胆管から肝門部領域へ広範囲に胆管内発育する稀な進展形式を示した腫瘍であり,今後さらに同様な症例が集積されることでその特徴が明らかになるものと考える.

エキスパート・レクチャー
  • 水野 隆史, 尾上 俊介, 渡辺 伸元, 山田 美保子, 川勝 章司, 江畑 智希
    2025 年39 巻2 号 p. 259-262
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/05/31
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    胆管は解剖学的に肝動脈・門脈と近接し,進行胆道癌ではしばしばこれらの肝流入血管への腫瘍浸潤が認められる.門脈合併切除を伴う肝門部領域胆管癌手術における門脈の切除・再建形式はその切除範囲や部位により異なるが,多くの症例では環状切除+直接端々吻合が選択される.一方,直接端々吻合での再建が困難な症例ではパッチグラフト再建や間置グラフト再建といったグラフトを用いた門脈再建が考慮される.門脈再建に使用されるグラフトは自家静脈グラフトが選択されることが多く,著者らは外腸骨静脈を好んで用いている.本稿では肝門部領域胆管癌に対する門脈間置グラフト再建についてその技術的要点を中心に解説する.

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