2011 年 25 巻 5 号 p. 768-773
要旨:症例は61歳,男性.発熱で近医受診し,血液検査にて肝機能障害を指摘された.そのときは自然軽快したが4カ月後に再度発熱・黄疸を認め,近医で肝機能障害を指摘された.腹部エコーでは,膵頭部腫大を認め,精査目的に当院紹介となり,緊急入院となった.ENBD造影で,下部胆管に表面不整な陰影欠損を認めた.腹部造影CTでは,下部胆管内に造影効果を認める腫瘤を認めた.画像所見,臨床所見から下部胆管癌の術前診断のもと,幽門輪温存膵頭部十二指腸切除術(D2郭清)を施行した.摘出標本の病理結果は,下部胆管内に進展した十二指腸乳頭部癌(ポリープ型,adenocarcinoma,20×11 mm,深達度od)であった.下部胆管内に進展したポリープ型の十二指腸乳頭部癌は極めてまれであり,文献的考察を加えて報告する.