抄録
先天性総胆管拡張症50例の切除総胆管,胆嚢上皮について病理組織学的に検討した.これらの総胆管拡張症では膵・胆管合流異常を伴っており,胆道系への膵液の逆流により炎症から癌化をも引ぎ起こすと考えられている.今回検索した非癌例の総胆管上皮では,炎症性の変化を伴うびらん,上皮の過形成から異型性を示すもののほかに,粘液腺や杯細胞の出現など化生性変化も多くみられた.特に,総胆管の異型上皮は4例に認められ,過形成や化生性変化を合併し,パネート細胞も2例にみた、胆嚢上皮では胆石の有無にかかわらず炎症所見がみられたが,4例に過形成を,また1例に腺腫を認めたのみで,粘膜上皮の変化は総胆管に比較し乏しかった.一方,3例の癌合併例でも癌部,非癌部の上皮に化生や過形成が認められた。以上の化生,過形成,異型性などの変化は癌化の一要因となり,総胆管拡張症が胆道癌の背景因子となることが示唆された。