胆道
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総胆管結石と見誤られた粘液産生胆管癌の1例
永川 裕一青木 達哉土田 明彦宇田 治増原 章井上 敬一郎青木 利明葦沢 龍人小柳 泰久
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1997 年 11 巻 3 号 p. 302-306

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抄録
症例は5 7 歳男性. 黄疸を主訴に近医入院. ERC などが施行され, 総胆管結石の診断で手術施行された.胆嚢摘出後の総胆管切開に際して,胆管より多量の粘液の排出を認めたため,T-tubeを挿入し,閉腹.粘液産生胆管腫瘍の疑いにて,当院入院となった.胆道ファイバーなどの諸検査にて,上部胆管を主体とした乳頭状病変が存在し,生検の結果,乳頭状腺癌が得られたため,粘液産生胆管癌と診断し,胆管切除,肝管空腸吻合術を施行した.術後約6カ月で,大動脈周囲リンパ節再発を認めたため,温熱化学療法を開始した.本疾患は,粘液産生の胆管内貯留によって,しばしば肝内結石,総胆管結石と診断され手術されることが多い.正確に術前診断されたものは,一般の胆管癌と比較して長期生存例を認めているが,自験例のように術中粘液の腹腔内散布に基づく再発例も報告されており,慎重かつ適切な術前診断が必要である.
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© 日本胆道学会
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