1998 年 12 巻 3 号 p. 270-275
結節浸潤型下部胆管癌に胆道鏡下マイクロ波凝固療法(EMCT)を施行した.患者は79歳と82歳の女性で,幽門部胃癌切除の既往,あるいは,糖尿病,高血圧症などの合併症があり,膵頭十二指腸切除術を希望しなかった.EMCTには弾頭型ケーブル電極を用い,1回の凝固に10秒間マイクロ波(50W)を照射した.1回の治療で15~20回凝固し,それを1~2週間隔で3~4回繰り返した.胆管開通後内瘻化チューブを留置し,EMCT完結後は自己拡張型金属ステントを留置した.さらに,放射線治療(50.4Gy)を追加して胆管周囲浸潤病巣を治療した.全治療期間を通じ,特記すべき合併症は無く,治療開始後9カ月経過した現在,局所再発の所見はない.本治療法は非観血的で安全に施行でき,放射線治療との併用も可能である.特に,門脈から距離のある限局性の下部胆管癌で,手術希望の無い,高リスク患者には安全で有効な治療手段となり得る.