1988 年 2 巻 2 号 p. 202-208
症例は45歳の男性で,昭和57年より計3回の強い右季肋部痛があり,他院で胆嚢内結石を指摘されていた.今回,手術目的で当院に来院したが,入院時の腹部単純X線写真上,右下腹部に特徴的な石灰化陰影が認められた.また,この石灰化陰影は体位によって著明に移動した.諸検査所見より,胆嚢内結石症および腸管内結石の診断で開腹手術を行った.この結果,異常石灰化陰影は,回盲部から約50cm口側の回腸に認めらたMeckel憩室内に存在する,複数の結石によるものであることがわかった.胆嚢は外観上異常はなく,内部には2個の胆石を認めた.一方,腸管には回転異常があり,このため右下腹部に小腸が一塊となっていた.盲腸はほぼ正常の位置に存在していた.胆石とMeckel憩室内結石は外観および割面構造とも全く異なっていたが,X線解析の結果,胆石は炭酸カルシウムを,またMeckel憩室内結石は蓚酸カルシウムを成分としていることがわかった.