2006 年 20 巻 4 号 p. 537-544
症例は34歳男性. 発熱, 上腹部痛を主訴に入院した. 入院時検査では肝胆道系酵素の上昇および線溶系因子の著明な亢進を認めた. 腹部CT検査では, 肝内血流不均衡による肝右葉と左葉での造影効果の差を認めた.門脈右枝は本幹から造影されず門脈血栓症と診断し, 抗凝固療法を開始した.胆嚢壁, 総胆管の壁の肥厚を認め急性胆管炎と診断した. 総胆管結石を疑い第5病日にERCPを施行した. 結石を確認し砕石し胆管ステントを留置した. 以後, 炎症所見, 肝胆道系酵素, 線溶系因子の改善を認めた. 第18病日に腹部血管造影を施行した. 経腹腔動脈性門脈造影では門脈右枝の狭小化を認めるものの, 明らかな陰影欠損像は認めなかった. 第47病日腹部造影CT検査施行し, 門脈右枝本幹, 右枝前枝, 後枝に血流を認め, 肝内血流不均衡も改善した.胆道系感染症に起因する門脈血栓症は, 血栓溶解, 抗凝固療法に加え, 内視鏡的な減黄を早期より施行することが重要と考えられた.