1983年から1986年までの4年間に術中胆道造影が行われた良性胆道疾患118例を対象とし,膵管内への造影剤の逆流の有無と胆汁中アミラーゼ値,胆汁中細菌の有無,および乳頭部括約筋の機能との関係を調べた.膵管内に造影剤が逆流した症例は118例中43例(36.4%)と高頻度であった.胆汁中アミラーゼ値が1,000IU/l以上の異常を示した症例は膵管内逆流陽性群では39.4%で,逆流陰性群の13.0%より頻度が高かった,また,胆汁中アミラーゼ高値症例中,胆汁中細菌培養陽性症例の頻度は76.2%で,アミラーゼ低値症例中の細菌陽性症例35.9%と比べてアミラーゼ高値症例に細菌陽性頻度が高かった.膵管内逆流と乳頭部括約筋の機能との関係をみると,逆流陽性群のほうが逆流陰性群より収縮期圧,振幅ともやや高い傾向にあった.膵管と胆道系との合流異常がなくても膵液と胆汁の相互移行が起こりやすい状態が存在し,胆道系の病態と相関する可能性が考えられた.