谷本学校 毒性質問箱
Online ISSN : 2436-5114
〈特集1〉医薬品の安全性試験 教科書から学べないもの
7. 動物へのストレスが毒性試験に与える影響について
宮脇 出南谷 賢一郎孫谷 弘明
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2010 年 2010 巻 12 号 p. 58-64

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抄録

 医薬品開発の安全性評価を実施するために、種々の毒性試験が実施されている。その中でも動物を用いた毒性試験は、被験物質の安全性を評価するうえで重要な位置を占める試験となり、これらの毒性試験がヒトに初めて化学品を投与する段階から始まる臨床試験や上市後の安全性を保障する基盤となる。よって、毒性試験において得られた所見が、被験物質の影響によるのか、それ以外の試験系のノイズなのかをきちんと分けて評価する必要がある。毒性試験に与えるノイズの代表的なものとして、動物へのストレスがある。試験に用いられる動物は、本来とは違う環境におかれ、被験物質を強制的に投与されたり、検査をされたりすることから、試験自体がストレスとなる。過去からこのストレスを最小限にするために、動物室の環境、馴化や実験手技などが検討されてきた。ここ数年はイヌにおけるオープンフィールドでの運動や、サル飼育舎に遊具を用いるなど動物倫理的な側面も充実してきている。しかしながら、どのような措置を講じようとも、動物にとって動物室は異空間であり、試験操作そのものはストレスであることから、ストレスの影響を拭い去ることは不可能である。そこで、毒性試験の結果を解釈するうえで、動物へのストレスが及ぼす毒性パラメータへの影響を理解することは重要である。

 本稿では、Q&A方式でストレスに関連した様々な報告をまとめ、動物実験を実施するうえで考慮すべき要因について探った。

 なお、ストレスという用語はSelye1)やChrousos2)により古くから定義されているものの実際その使われ方は非常に曖昧でストレス反応とストレス要因(ストレッサー)が混在しており、誰もが納得できるような定義はない。従って、本稿においては敢えてストレス反応とストレス要因を分けずに論述する。

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© 2010 安全性評価研究会
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