医薬品開発において規制当局と申請者はパートナーであり、互いの協働が不可欠である。申請者は医薬品開発ステージに応じて、治験届、相談資料、承認申請資料等の文書を規制当局に提出する。申請者から規制当局に提出されたこれらの文書が照会事項の起点となる。それぞれの文書には目的があり、その目的に応じた内容が記載されていることを期待されるが、その内容に不足や疑問が生じた場合に照会事項が発出される。
承認申請資料を例にとると、記載不足のために発出される照会事項としては、例えば、本来は実施することになっている試験が実施されておらず、その根拠が記載されていない場合や規制当局にとって記載されている根拠が理解しにくい場合が挙げられる。毒性評価としての記載について期待されている内容が文書中にない場合も照会事項が発出されることがある。例えば、見られた変化を毒性でないと判断した理由に関して照会された経験をもつ申請者も少なくないと想像する。また、記載内容に疑問を生じて発出される照会事項もある。例えば、ラットでは毒性と判断したが、同じ所見をイヌでは毒性と判断していない場合、試験横断的にみると矛盾するように見えることがある。開発初期から長い間、その薬剤と付き合ってきた申請者にとっては矛盾がないことであっても、初見の規制当局が感じる矛盾を解消するためには丁寧な説明が必要な場合もある。
このように申請者が規制当局に提出する文書が起点となって照会事項が発出されるが、発出する側の規制当局にとっても、受ける側の申請者にとっても照会事項のやり取りに多くの労力が消費されることから、照会事項は少ないのが望ましい。規制当局と申請者の目線が一致していれば照会事項の発出数も少なくなるだろう。申請者が規制当局の目線を学ぶためにできることはある。例えば、公表されている審査報告書から規制当局の目線を読み取ることや過去に発行された規制当局の審査員向けの通知から審査の視点を学ぶことが可能である。
本稿では、公表情報をもとに、医薬品開発において非臨床担当者が遭遇する照会事項に対する筆者の知見を述べる。すなわち、照会事項発出の起点となる文書内には、何が記載されていることが期待されているか、照会事項を少なくするための工夫とは何かを共有する。なお、本稿の作成にあたり開示すべき利益相反はなく、本稿の内容は筆者の個人的見解であり、所属する組織の公式な見解ではないことを留意されたい。
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