谷本学校 毒性質問箱
Online ISSN : 2436-5114
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谷本学校 毒性質問箱
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はじめに
器官培養
  • 小川 毅彦
    原稿種別: その他
    2020 年 2020 巻 22 号 p. 1-5
    発行日: 2020/09/26
    公開日: 2022/06/06
    解説誌・一般情報誌 フリー
     精子形成のメカニズムを解明することと、精子形成を体外(in vitro)で再現することは、精子形成研究の両輪である。そのin vitro精子形成の試みの歴史は一世紀に及ぶ。我々はアガロースゲル上に精巣組織片を乗せて、培養液に血清代替物(KnockOutTM Serum Replacement: KSRあるいはAlbuMAXTM)を加えることで、マウス精子形成が完遂できることを示した。産生された精子を顕微授精することで産仔も得られた。さらに精巣組織は凍結保存でき、解凍後に培養しても精子産生でき、産仔も得られた。このin vitro精子形成系を生殖毒性試験に応用することも可能であると考えられたが、そのためにはいくつかの課題が見い出された。1つは、現在の器官培養法は、精子産生の効率や持続期間の点で生体内の精子産生には、はるかに及ばないことである。また、組織片の部位によって精子形成の効率が大きく異なるため、通常の組織切片での評価では結果にばらつきが生じる可能性がある。さらに培養組織ごとのばらつきも少なくない。このような課題を解決するための方法の1つとして、我々はPDMS ceiling chip法(PC法)を開発した。本稿では、in vitro精子形成の意義と、アガロースゲル上精巣組織片器官培養法(AG法)及びその改良法であるPC法について解説する。
  • 佐藤 友美
    原稿種別: その他
    2020 年 2020 巻 22 号 p. 6-10
    発行日: 2020/09/26
    公開日: 2022/06/06
    解説誌・一般情報誌 フリー
     哺乳類の卵巣はステロイドホルモン産生と配偶子形成の2つの役割を持ち、いずれも卵母細胞を中心に顆粒膜細胞が取り囲む卵胞構造を必要とする。卵胞は、いったん形成されると同じ形態を維持したまま成長し、脳下垂体からの黄体形成ホルモン刺激により排卵する。また、通常は1つの卵胞内には1つの卵母細胞が含まれているが、2つ以上の卵母細胞を含む多卵性卵胞が発生することがある(図1)。近年、卵胞形成時のさまざまな障害により多卵性卵胞が多発することが分かってきており、多卵性卵胞の発生メカニズムの解析により、卵胞がどのように形成され、またどのような因子が必要であるか、正常な卵胞形成過程も明らかにできると考えられる。我々は、出生直後のマウスに合成エストロジェンであるdiethylstilbestrol(DES)を投与すると多卵性卵胞が多発することに着目し、その発生メカニズムを解析している。本稿では、多卵性卵胞発生メカニズムに関するこれまでの知見と、卵胞形成研究の発展性について紹介する。
  • 田尾 文哉, 小島 伸彦
    原稿種別: その他
    2020 年 2020 巻 22 号 p. 11-15
    発行日: 2020/09/26
    公開日: 2022/06/06
    解説誌・一般情報誌 フリー
     医薬品候補化合物の肝毒性を評価するためにヒト凍結肝細胞が用いられるが、ロットごとに薬物代謝酵素の発現量が大きく異なることや、同一ロットを使い続けることが不可能であることなどが問題となっている。これらの問題を解決するアプローチの1つは、ヒトiPS細胞から分化誘導した肝細胞様細胞(human-iPSC-derived hepatocyte-like cell: hiPSC-HLC)を利用することである。hiPSC-HLCは疾患の原因となるような遺伝子多型を、ゲノム編集技術によって比較的容易に再現できるといった長所を持つ。しかし、市販されているhiPSC-HLCは完全に分化しているとは言い難く、薬物代謝酵素の発現量を十分確保するには何らかの改良が必要である。
     細胞接着処理が施されていないプレートに細胞を播種して静置あるいは旋回を行うと、細胞同士が緩く接着した凝集塊となる。さらにこれを培養すると細胞同士が密に接着し、滑らかな表面をもったスフェロイドと呼ばれる球状の組織が得られる。スフェロイドの作製は、低接着表面をもつU底プレートなど凹みをもつ培養器材を利用する方法や、懸架(ハンギングドロップ)法による方法などによっても可能であることがよく知られている。肝細胞の分化機能を維持あるいは亢進する方法として、スフェロイド培養は一般的である。例えばラットの初代肝細胞は平面培養では1週間程度でアルブミン分泌活性が消失するが、スフェロイドにすることによってその活性が1ヵ月程度持続することが知られている1)
     hiPSC-HLCやヒトES細胞由来の肝細胞様細胞についても、3次元スフェロイド培養によって分化の程度が向上することが報告されており2,3)、ヒト凍結肝細胞に迫る機能を発揮できる可能性が示唆されている。これらの成果は製薬会社などのユーザーにとって魅力的であるが、市販されているhiPSC-HLCをスフェロイド培養した際にも同様の成果が得られるかどうかは不明である。本稿ではこのような問題意識に基づいて、市販のhiPSC-HLCを利用してスフェロイド培養を行い、薬物代謝酵素などの発現がどのように改善するのかを調べることを目的とした。
DILI
  • 石田 誠一
    原稿種別: その他
    2020 年 2020 巻 22 号 p. 16-21
    発行日: 2020/09/26
    公開日: 2022/06/06
    解説誌・一般情報誌 フリー
     肝臓は体内で最大の臓器であり、生命の維持にとって様々な機能を有している。その中の1つが、いうまでもなく医薬品をはじめとする体外異物の解毒を目的とした化学物質の代謝である。肝臓には消化管からの血流が肝門脈として流れ込んでおり(図1A)、肝動脈からの血流と併せて、健常人では安静時で1分間に約1 Lの血液が流れていると言われている。このため、肝臓では服用した医薬品の曝露が大きく、それゆえに、まれに予期しない肝障害を起こすことが知られている。このような薬物性肝障害は急性肝障害の中では最もよく見られる原因となっている。しかし、残念ながら非臨床試験で用いられる現在のin vitro/in vivoの評価系では、薬物性肝障害の発症を的確に予測することはいまだに難しい。非臨床試験においては動物実験による医薬品候補化合物の肝障害の予測が主流であるが、必ずしも予測性に優れているとは限らない。1つの理由として、医薬品候補化合物の毒性発現に薬物代謝が関与することが挙げられる。前述したように、医薬品候補化合物は、肝臓で薬物代謝酵素による代謝を受ける。この薬物代謝酵素には種差があることが知られており、同じ医薬品候補化合物でも、実験動物とヒトでは、代謝産物が異なる場合があることが知られている。そのため、今までにも、非臨床段階の動物試験では肝障害が認められなかったにもかかわらず、臨床段階やpost-marketingの段階で肝障害により撤退した化合物の例1)や、逆に、非臨床段階では動物で肝障害の所見があったにもかかわらず、臨床段階でヒトでは肝障害が認められなかった例2)が報告されてきている。このような例のために、今までのように非臨床段階で動物試験に頼るだけでは医薬品候補化合物の安全性予測の精度を高めることは難しくなりつつあり、ヒト細胞を出発材料に用いたin vitroアッセイ系が開発されてきた。ここでは特に細胞を用いた培養系を構築することが必要になるin vitroアッセイのうち、胆管形成、肝ゾーネーション、肝星細胞の開発について、我々の研究室で得られた結果を交えて概説してみたい。なお、肝臓を構成する主要な細胞である肝実質細胞については、樹立細胞株やヒトiPS細胞から分化誘導したもの、ヒト肝キメラマウスから単離した肝細胞など供給資源が広がってきているが、その点については過去の総説を参照していただきたい3)
  • 辰己 久美子, 長谷川 慎一郎, 和田 浩志, 長田 盛典, 大植 雅之, 坂井 義治, 田原 秀晃
    原稿種別: その他
    2020 年 2020 巻 22 号 p. 22-25
    発行日: 2020/09/26
    公開日: 2022/06/06
    解説誌・一般情報誌 フリー
     薬物治療における肝障害は、主要な副作用の1つである。遺伝的背景や基礎疾患の相違などにより、臓器障害の頻度や程度には個人差が大きく、患者ごとの肝障害の予測や機序解明にはいまだ課題が多い。患者個別の生体試料を用いる検討は、患者間差の反応を評価するために有用と考えられ、実現に向けて細胞培養技術の開発など様々な研究がなされている。主に用いられるヒト由来の細胞としては、成熟細胞である初代培養肝細胞や人工多能性幹細胞(iPS細胞)が挙げられる。また、肝臓に存在する組織幹細胞も近年着目されている。しかし、これらの細胞は、移植不適合の肝臓や組織生検試料、また血液や皮膚などから分離・作製するものであり、材料採取にあたって侵襲を伴うばかりではなく、欧米とは異なる本邦における倫理基準を満たす必要があるために、本邦で用いる生体試料には大きな制限がある。そこで、我々は、より多数の患者由来の試料を得るために、治療として手術により切除した肝組織のうちの残余部分を検体として用いることにより、患者個別の肝毒性評価の研究を進めている。本稿では、残余肝組織からの細胞調製の実例について紹介する。
  • 竹村 晃典
    原稿種別: その他
    2020 年 2020 巻 22 号 p. 26-31
    発行日: 2020/09/26
    公開日: 2022/06/06
    解説誌・一般情報誌 フリー
     医薬品の開発において、その成功確率が年々低くなっている。その原因として第1位は薬効の不十分であるが、その次として安全性(毒性)が挙げられている1)。つまり、臨床における安全性(副作用)を早期の段階にて適切に予測することが新薬開発の成功に向けて非常に重要である。
     医薬品による毒性は主に中毒性の毒性及び特異体質性の毒性(idiosyncratic drug toxicity: IDT)に分けられる2)。前者は各薬物の薬理作用に起因し、投与量依存的にその毒性がみられることが多い。そのため投与量を減量することでその発症を回避することが可能であるため、臨床上問題となることは少ない。
     一方でIDTは薬理作用との関係性や用量依存性はないことから、それを予測することは非常に困難である。そのため非臨床試験~臨床試験において様々な安全性試験を経たにもかかわらず、上市された後に発症し、また稀に死に至ることもある。さらに、これが原因で医薬品の市場撤退につながると多大な損害を被るため、製薬企業にとって回避すべき事案である。またIDT発症は非常に割合が低く、約5,000~10,000人に1人の割合で発症すると言われている。その原因として、薬物そのものの毒性発現ポテンシャルだけでなく、患者の薬物代謝酵素・トランスポーターなどの遺伝的背景、疾患及び食事・飲酒・喫煙などといった生活習慣の要因すべてが重なった際に発症することが挙げられる。そのため、遺伝的背景が同じである動物を用いた非臨床試験や、除外基準をクリアした安全性の高い患者集団(~1,000人規模)における臨床試験ではみられず、上市後に数万人以上の患者に使用され初めてみられる。これらを解決するためには医薬品による毒性発症メカニズムを詳細に解明し、それに基づいた適切なin vitro評価系を構築することが重要と考えられる。一方で、薬物により引き起こされる毒性は様々に存在する。その中でも医薬品開発の中止・市場撤退という観点から調べた報告では、心毒性・肝毒性が主たる原因であることが明らかとなっている3)。つまり、このような毒性を早期にかつ適切に検出することが新薬開発を成功につなげるために急務であり、その中でも本総説では薬物性肝障害(drug-induced liver injury: DILI)に着目し、DILIの発症メカニズムから我々の研究成果を含めて概説する。
  • 末水 洋志
    原稿種別: その他
    2020 年 2020 巻 22 号 p. 32-40
    発行日: 2020/09/26
    公開日: 2022/06/06
    解説誌・一般情報誌 フリー
     新薬開発の初期段階では、げっ歯類などの実験動物を用いて様々な試験が実施され、有効性があり、かつ安全性が十分に確認された開発薬のみが臨床試験の段階へと進められる。B型肝炎治療薬として有望視されたfialuridineは、このような厳しい試験を乗り越えて開発されたにもかかわらず、臨床試験の段階で15名の被験者のうち5名に重篤な肝障害を発症させ、開発中止となった薬剤である1)。また、臨床試験で優れた成果を上げ「新薬」として市場での流通を果たしたにもかかわらず、その後、重篤な副作用が発見され撤退を余儀なくされた医薬品も多数ある。臨床試験に進む前の段階、すなわち「非臨床試験」の段階でヒトにおける副作用を十分に予測できればこのような事故を未然に防ぐことができたはずである。医薬品の多くは肝臓の薬物代謝酵素群により修飾され、胆汁あるいは尿中に排泄されるが、非臨床試験でよく用いられるげっ歯類とヒトでは薬物代謝酵素の特性に大きな差があるため、動物実験の結果をそのままヒトに外挿することは難しい。例えば、マウス及びラットでは毒性代謝物が産生されないためヒトにおける毒性が見過ごされることや、これとは逆に、げっ歯類に特異的であってもひとたび毒性が検出されれば開発が遅延、あるいは中止に追い込まれることが起こりうる。このような動物種の違い(種差)に起因する開発のつまずきを極力抑え、かつヒトにおける薬物代謝の予測性を向上させるために、ヒト由来の生体材料、特に初代培養肝細胞や肝ミクロソーム画分を用いた非臨床in vitro試験が進められている。現在では、動物種差の克服をめざした非臨床研究用創薬ツールとしてin vivoin vitroのいずれにおいてもヒト肝細胞を保有する肝キメラマウスが使用されるようになった。本稿では、実験動物中央研究所(実中研)が開発したヒト化肝臓マウス(Hu-liver TK-NOG)2)の特徴と、それを肝毒性評価に用いる際の解析手法を紹介したい。
  • 織田 進吾
    原稿種別: その他
    2020 年 2020 巻 22 号 p. 41-48
    発行日: 2020/09/26
    公開日: 2022/06/06
    解説誌・一般情報誌 フリー
     医薬品開発において、目的に応じた様々なバイオマーカーがその質の向上及び意思決定に貢献している。これらのバイオマーカーには、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、イメージングなどが利用されている。肝毒性バイオマーカーには血漿/血清中アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、ビリルビン(Bil)、アルカリフォスファターゼ(ALP)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(γ-GT)などがある。一般的にこれらバイオマーカーは臓器特異性が必ずしも高くなく、肝外病変に応じて変動するものも知られており、また臓器障害がある程度重篤になって初めて変動する。したがって、組織/臓器特異性及び疾患特異性の高いバイオマーカーは肝病変の早期発見・検出を可能とするだけでなく、毒性機序の推定に貢献する。microRNA(miRNA)は、組織特異的な発現を示し、血清及び血漿において比較的安定的に存在するため、新たなバイオマーカー分子として期待されている。本稿では、非臨床実験動物モデルにおける肝毒性を中心に、循環miRNAのバイオマーカー探索例を紹介する。
  • 渡 隆爾
    原稿種別: その他
    2020 年 2020 巻 22 号 p. 49-54
    発行日: 2020/09/26
    公開日: 2022/06/06
    解説誌・一般情報誌 フリー
     −薬物動態におけるヒト予測の意義−
     医薬品開発における薬物動態研究の役割とは何か?それは、創薬初期から承認申請まで数多くの薬物動態試験を適切に行い、患者様に一日でも早く薬を届けることにある。特に、臨床導入する医薬品候補化合物の選定では、各種薬物動態プロファイルを明らかにし、正確なヒトpharmacokinetics(PK)予測により臨床薬効用量を推定し、安全で治療効果の高い候補化合物を決定するという重要な役割を担っている。よって、非臨床段階におけるヒトPK予測は、成功確度の高い医薬品開発を進めるうえで重要であり、その予測精度を向上させることが薬物動態研究の責務であるとともに、醍醐味ともいえる。
     さて、医薬品開発において、回避しなければならないことは開発中止や市場撤退である。1990年代には、開発中止理由のうち約40%がbioavailability(生物学的利用率)などの薬物動態に起因しており高い割合を占めていた1)が、2000年代以降、激減している2)。これらの要因として、肝細胞や肝ミクロソームなどのヒト生体試料が使用できるようになり、薬物動態研究の進展とともにトランスレーショナル/リバーストランスレーショナル研究が推進されたことが寄与したと考えられる。一方で、安全性及び薬理効果については依然として開発中止理由の多くを占めており、その比率は過去と比較しても大きく変動してはいない。
     では、安全性や薬理効果が原因で開発中止となるリスクを回避するために、薬物動態研究者が果たすべきことは何か?それは、最終開発候補品を決定する段階で、安全性研究者や薬理研究者と協働し、ヒトのPK予測に加え安全性や薬理効果も予測すること、すなわち、PK/PD(pharmacodynamics)及びTK/TD(toxicokinetics/toxicodynamics)による定量的な創薬をリードすることである。
     PK/PD及びTK/TDはヒトPK予測が根幹にあり、その精度が大きく影響する。そのため、ヒトPKの予測性を向上させる研究は、薬物動態研究が進んだ今もなお重要であることに変わりはない。ヒトPK予測精度の向上に向けた取り組みの1つが、薬物代謝の中心臓器である肝臓を扱う肝代謝研究である。
     そこで、我々は肝代謝研究に必要な肝細胞培養技術に着目し、研究を推進してきた。
  • 富田 貴文
    原稿種別: その他
    2020 年 2020 巻 22 号 p. 55-61
    発行日: 2020/09/26
    公開日: 2022/06/06
    解説誌・一般情報誌 フリー
     薬剤性肝障害(drug-induced liver injury: DILI)は、医薬品の研究開発中止や販売中止の主要な原因の1つである1)。これまでに600以上の医薬品にDILIの発現が報告されている2)。したがって、医薬品の研究開発において、DILIは安全性上の重要な懸念事項であり、創薬早期にヒトでのDILIリスクを予測することは、研究開発を効率的に進めるために重要である。しかしながら、DILIの発現に関して、実験動物を用いた定型的な毒性試験と臨床試験の結果の一致率が低いこと3)及びヒトでの発現率が低いこと4)から、創薬早期にヒトでのリスクを予測することは難しい。
     近年、化合物のDILIリスクを予測するために、様々な肝臓由来の材料を用いたin vitro評価系が開発されてきた。その中で、ヒト初代培養肝細胞及びヒト肝腫瘍由来細胞株HepG2はDILIのin vitro評価系において最も広く使用されている。ヒト初代培養肝細胞は、P450などの肝機能を保持しているが、その機能維持には課題があり、ドナーに起因するロット間差が大きい5)。一方、HepG2細胞は多くの肝機能、特にP450活性が低い5)
     HepaRGは肝細胞癌を患っている女性から樹立した細胞株である6)。HepaRG細胞はHepG2細胞などの他の肝細胞株と異なり、P450、核内受容体、トランスポーター及び第Ⅱ相酵素などの多くの肝機能を保持している7,8)。また、HepaRG細胞はロット間差が小さく、培養時に肝機能の発現が安定していることから、ヒト初代培養肝細胞と比較して再現性が高い結果を示す9)。したがって、薬物代謝研究や毒性研究において、HepaRG細胞はヒト初代培養肝細胞やHepG2細胞などの代替として期待されている。
     当社では、HepaRG細胞を用いたDILIリスク予測評価系の構築を試みた10-12)。本稿では、マルチパラメータ測定によるDILIリスク予測評価系の検討(研究1)11)及びリン脂質症(phospholipidosis: PLD)予測評価系の検討(研究2)12)について紹介する。
  • 藤本 和則
    原稿種別: その他
    2020 年 2020 巻 22 号 p. 62-67
    発行日: 2020/09/26
    公開日: 2022/06/06
    解説誌・一般情報誌 フリー
     トログリタゾンは核内受容体であるPPARγに対してアゴニスト活性をもつチアゾリジン系抗糖尿病薬として、1997年より販売が開始された。しかしながら、その後まれではあるが重篤な肝毒性が散見され、2000年に本製品の販売中止が判断された。正常な実験動物を用いた非臨床安全性試験では肝毒性を示唆する結果は得られていないこと、また臨床での肝毒性発症頻度が非常に低いことなどから、トログリタゾンによる肝毒性は特異体質に起因すると考えられている1)。特異体質性肝毒性は、その発症メカニズムが明確ではなく、また先にも述べたように正常な実験動物を用いた非臨床安全性試験での検出は非常に困難であることから、前臨床段階でそのリスクを把握することは難しい。しかしながら、製薬企業の毒性研究者には、前臨床段階で特異体質性肝毒性リスクを評価し、より安全な薬を早く患者に届ける責務がある。本項では、トログリタゾンによる肝毒性発症に関わる因子としての可能性が報告されている「反応性代謝物生成リスク」と「ミトコンドリア毒性」を検出する評価系構築とその応用について論じていきたい。トログリタゾンに限らず、特異体質性肝毒性を引き起こす薬物の多くが「反応性代謝物生成リスク」もしくは「ミトコンドリア毒性」を有している。これらが特異体質性肝毒性を引き起こしている直接的な証拠はいまだ得られていないが、これらを回避することは特異体質性肝毒性のリスクを軽減すると考えられている。
  • 長谷川 洵
    原稿種別: その他
    2020 年 2020 巻 22 号 p. 68-73
    発行日: 2020/09/26
    公開日: 2022/06/06
    解説誌・一般情報誌 フリー
     医薬品の開発中止/販売中止の主要因の1つとして知られている薬物性肝障害(drug induced liver injury: DILI)1)は厚生労働省の重篤副作用疾患別マニュアルによると、大きく「一般型」と「特殊型」に分類され、さらに一般型DILIは「中毒性」と「特異体質性」に分類される(図12)。中毒性DILIは用量依存性があることが知られており、非臨床段階で検出可能だと考えられている。一方で、特異体質性DILIは「アレルギー性特異体質」と「代謝性特異体質」に分類されるが、その多くは詳細な機序が不明であり、また臨床での発現頻度が極めて低いため、動物・細胞を用いた非臨床試験や少数例の患者を対象とした臨床試験での検出難易度が高い。また、発現したDILIの用量反応性や個人差との関連を考察してヒト肝毒性リスクを正しく解釈することが難しい。そのため、医薬品開発を行うメーカーはヒト安全性を担保するために肝毒性に対して十分な安全域を持つ薬物を非臨床段階で選抜していることが多い。
     特異体質性DILIを非臨床試験で検出するために、反応性代謝物生成、ミトコンドリア毒性、胆汁酸トランスポーター阻害などの機序に基づくin vitro試験系が開発されている。これらの試験によって特異体質性DILIの発現機序に対する理解が深まったものの、依然としてそれぞれの試験結果を統合的かつ定量的に解釈してヒト肝毒性を予測することは難しい。
     臨床における薬物性肝障害は主に血清中アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase: AST)、血清中アラニンアミノトランスアミナーゼ(alanine aminotransaminase: ALT)及び血清中ビリルビンを指標に評価されており、特に肝機能低下を示唆する黄疸を伴う肝障害は予後が悪いことが知られ、急性肝障害によって10~50%の割合で死亡または肝移植に至ると言われている3)。このような重篤な肝障害を検出する1つの指標としてALTまたはASTの正常値上限の3倍以上及びビリルビンの正常値上限の2倍以上が一般的に設定されており、これはHy’s lawという名称でも知られている4)。Hy’s lawの基準は重篤な肝障害を避ける目的では有用であるものの、一方でHy’s lawに該当しても重篤な肝障害につながらないケースもあり、肝障害リスクの過剰評価につながっているとも言われている5)
     以上の通り、非臨床肝毒性評価に対して課題は多く残っており、特に我々は①非臨床試験で取得可能な実験結果の統合的な解析によりヒトDILIを定量的に予測すること、②ヒトDILI(特に特異体質性DILI)が発現した際にその機序や用量反応性、個人差との関連を考察し、リスクを正しく解釈すること、の2点を解決して医薬品開発で直面するDILIを克服することが大きな課題であると考えている。
     上記課題を解決するために我々はDILIsym Service社が主導するDILI-sim コンソーシアムに参画し、複数のin vitro肝障害評価試験データ(反応性代謝物生成、reactive oxygen species(ROS)産生、ミトコンドリア毒性、胆汁酸トランスポーター阻害など)に基づいてヒトDILIリスクを予測・評価可能なquantitative systems pharmacology(QSP)モデルであるDILIsym®の有用性を検証した6)。本稿においては非臨床DILI評価においてDILIsym®が注目されている背景、現時点で公知となっているDILIsym®活用事例をまとめ、現在までに行った検証でみえてきた有用性及び課題と今後の展望について紹介する。
  • 臼井 亨
    原稿種別: その他
    2020 年 2020 巻 22 号 p. 74-81
    発行日: 2020/09/26
    公開日: 2022/06/06
    解説誌・一般情報誌 フリー
     特異体質性薬物毒性(idiosyncratic adverse drug reactions: IADRs)は、通常の非臨床安全性試験では検出できず、臨床試験や市販後に顕在化する副作用である。IADRsの主要ターゲットは皮膚及び肝臓であり、特に薬疹や特異体質性の肝毒性(idiosyncratic drug-induced liver injury: iDILI)は、薬剤が開発中止や市販後に警告・販売中止に至る主要因となる有害事象である1)。薬剤性の肝毒性には、非臨床の安全性試験で検出可能なタイプ(intrinsic DILI)と、検出されないタイプ(iDILI)があり、製薬企業にとってはどちらも避けるべき毒性であるが、研究者は自身の選択する評価系が、どちらのタイプをターゲットとしているかを理解することが重要である。例えば、スクリーニング段階におけるラット肝細胞を用いた細胞毒性試験は、intrinsic DILIをターゲットとしたものである。この試験は、少量の化合物を用いてハイスループットで実施できることから、評価スピードや動物福祉の観点から動物試験のサロゲートとしては有用な試験であるが、iDILIを回避するパラメーターとしては不適な可能性がある。本稿では、予測が難しく、製薬企業にとって致命的となるiDILIをターゲットとし、iDILIを避けるためにどのような評価系が有用なのかについて紹介する。
  • 赤井 翔
    原稿種別: その他
    2020 年 2020 巻 22 号 p. 82-87
    発行日: 2020/09/26
    公開日: 2022/06/06
    解説誌・一般情報誌 フリー
     薬物誘導性肝障害が問題になるのは、正常動物を用いた非臨床安全性試験では検出できず、ヒトに初めて投与、または販売承認後に広く臨床で使用された際にヒトで肝障害が起こるときである。近年では糖尿病治療薬として開発されたトログリタゾンの事例が有名であるが、ヒトで原因不明の肝障害が起こったため、2000年に販売中止となった。過去に販売中止となった医薬品を振り返っても、重篤な肝障害が起こり、死亡例が出た場合には医学的・社会的な問題となることが多い印象が伺える。一方、カルバマゼピンやフェニトインなど肝障害が報告されているが、現在も使われている医薬品があることからも、肝毒性発現の重症度だけでなく、その頻度や使われている疾患領域も販売中止の判断に関連していると考えられる。
     薬物誘導性肝障害が起こる機序を解明するための研究は古くからなされており、様々な動物実験やin vitro細胞を用いた論文が報告されている。その中でもヒトin vivoからヒトin vitroへのトランスレーション研究(ヒト臨床で肝障害が起こった機序を、ヒト細胞などを用いたin vitroで解明する研究)は進んでいる一方で、ヒトin vivoで肝障害が起こる理由を論理的に矛盾なく説明できるかについては疑問が残る。例えば、ベンズブロマロンやトログリタゾンの肝毒性の一因としてミトコンドリア毒性が考えられるが、ベンズブロマロン及びトログリタゾンが動物in vivoで肝臓のミトコンドリア毒性を伴う肝毒性を起こすという報告はない。実際に、ラット肝細胞を用いたin vitro検討でミトコンドリア毒性が検出されていることからも1,2)、少なくともラットではin vitroからin vivoへのトランスレーションは完全にできていない。
     トログリタゾンの肝障害発現の機序解明に関する研究は20年前から進められているが、現在も完全には説明できていない。様々な実験結果を基に論文報告がなされているが、時代とともにトレンドは変化しており、反応性代謝物による特異体質性肝障害、グルタチオン転移酵素のアイソザイムであるGSTT1とGSTM1同時欠損の関与、ミトコンドリア毒性やトランスポーター阻害など様々な仮説が提唱されている3)。しかし、これらの論文は基本的にin vitroやレトロスペクティブな解析であり、ヒトin vivoでトログリタゾンの肝障害発現の機序を検討してはいないため、トログリタゾンがヒトで使用されなくなった今、本質的に肝障害発現の機序を事実ベースで解明することは不可能に近い。したがって、in vitroからin vivoへのトランスレーションが正しいことを示すためには、非臨床で薬物誘導性肝障害動物モデルを作製してヒト特異的にみられる薬物誘導性肝障害を再現し、in vitroで推定された肝障害発現の機序がin vivoで正しいことを証明することが必須だと考えている。
     本稿では、非臨床in vivoモデルを用いた肝障害評価の中でも特に種差・系統差に着目し、1)グルタチオン減少モデル、2)免疫関連性の肝障害モデル、及び3)胆汁うっ滞型肝障害モデルについて紹介する。薬物誘導性肝障害の研究は日本のみならず世界中で精力的になされている。欧米でも肝毒性の種差、特にin vivoモデルを用いた検討を論文投稿している研究者は多く、Robert Roth、Lance Pohl及びJack Uetrechtが研究者として著名である。他にも、ヒト血液サンプルを用いた肝毒性研究をしているKevin Parkの研究室でも興味深い論文が投稿されている4)
  • 黒岡 貴生, 坂本 栄, 有坂 宣彦
    原稿種別: その他
    2020 年 2020 巻 22 号 p. 88-93
    発行日: 2020/09/26
    公開日: 2022/06/06
    解説誌・一般情報誌 フリー
     薬物性肝障害(DILI)は医薬品の開発中止または市場撤退の主要因であり、医薬品開発の早期段階でDILIリスクを精度よく検出することが求められる1)。臨床試験におけるDILIの検出には、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及び総ビリルビン(T-BIL)が広く用いられている。さらにDILIの重篤度の予測として、これら3つの肝障害バイオマーカー(BM)を用いた基準(Hy's Law)が有用とされている。これら既存肝障害BMは非臨床安全性評価においても広く利用されているが、感度または特異度の点で課題を有しており、DILIリスクを精度よく検出できる新規肝障害BMが求められている。
     既存肝障害BMの課題として、肝臓特異的に発現していないことがあげられる。AST及びALTは肝臓以外にも骨格筋及び小腸などに発現しており、骨格筋などの肝臓以外の障害により血中の値が高くなることが報告されている2)。さらに、AST及びALTは肝臓または小腸における糖新生などのアミノ酸代謝において重要な役割を担っており(図1)、糖質コルチコイドなどの糖新生ホルモンや食事制限などによる糖代謝変化によって臓器中の活性が亢進し、肝障害を伴わずに血中で高値となることが知られている3)
     精度よくDILIリスクを検出できる可能性のある新規肝障害BMとして、グルタミン酸脱水素酵素(GLDH)及びマイクロRNA-122(miR-122)が研究されている。GLDHはAST及びALTに比して肝臓での発現が高い酵素であり、肝臓でのアミノ酸代謝に重要な役割を担っている(図14)。一方、miR-122は肝臓特異的に発現しているマイクロRNAであり、脂質代謝に関与していることが知られている5)。GLDH及びmiR-122は肝特異度の点で既存肝障害BMよりも優れていることが示されている一方で、糖代謝変化による影響については十分に評価されていない。
     GLDH及びmiR-122は複数のラットDILIモデルにおいて、既存肝障害BMと比較して肝障害の検出力及び早期予測性に優れていることが報告されている6,7)。ただし、GLDH及びmiR-122の肝毒性BMとしての有用性評価はげっ歯類を用いた報告が多く、非臨床毒性試験で用いられる非げっ歯類における有用性評価の報告は少ない8)
     非臨床安全性評価においては、既存肝障害BMによる胆道系障害に対する検出力の低さも課題である。T-BILは胆道系障害BMとして特異度は高いものの、軽度な障害では変化せず、感度の低さが課題である。肝障害はその障害部位により小葉中心性または胆道を含む小葉辺縁性に分類され、肝障害BMは、その肝小葉内局在により、部位ごとの検出力が異なることが知られている。GLDH及びmiR-122はいずれも肝小葉中心部に局在しており4,9)、小葉辺縁部に局在するBMを見出すことは、既存肝障害BMの課題である胆道系障害に対する検出力向上につながると期待される。
     肝臓に多く発現するマイクロRNAのうち、miR-802は小葉辺縁部に局在することが分かっている(未発表データ)。miR-802は、α-Naphthylisothiocyanate(ANIT)投与により胆道を含む小葉辺縁性に障害を誘発させたラットにおいて、miR-122と同等以上の検出力を示すことが報告されており、胆道系障害の検出感度を高められる可能性がある10)
     本研究では、新規肝障害BMであるGLDH、miR-122及びmiR-802について、以下の3つの検討において既存肝障害BMと比較することにより、特徴付けすることを目的とした。
    ①糖代謝変化が新規肝障害BMに与える影響
    ②カニクイザルDILIモデルにおける新規肝障害BMの有用性評価
    ③ラットDILIモデルにおける新規肝障害BMの有用性評価
  • 近藤 千真, 甲田 章, 重見 亮太, 藤澤 希望, 黒岡 貴生
    原稿種別: その他
    2020 年 2020 巻 22 号 p. 94-97
    発行日: 2020/09/26
    公開日: 2022/06/06
    解説誌・一般情報誌 フリー
     第28回夏の教育フォーラム(Training & Discussion Camp)では、「臨床検査、薬剤誘発性肝障害(DILI)を基礎から学ぶ」というテーマの下、薬剤誘発性肝障害の評価に関しin vitroからin vivoまで広範囲にわたる講演とともに、「毒性質問箱 産官学エキスパートと徹底議論!薬剤誘発性肝障害 何でもQ&A」が開催され、ディスカッション形式で意見交換がなされた。また、ナイトセッションでは、当フォーラムの参加者より集めた質問をフリーディスカッションの形式で議論した。質問は多数寄せられ、すべてのディスカッション内容を掲載することはできないが、現場の担当者にとって有用と考えられるものを以下にまとめた。
核酸医薬_毒性質問箱
  • 木下 潔, 松下 聡紀, 鈴木 慶幸, 藤田 卓也, 土居 正文
    原稿種別: その他
    2020 年 2020 巻 22 号 p. 98-103
    発行日: 2020/09/26
    公開日: 2022/06/06
    解説誌・一般情報誌 フリー
     核酸医薬品は、「天然型核酸あるいは修飾型核酸が直鎖状に結合したオリゴ核酸を薬効本体とし、タンパク発現を介さず直接生体に作用する、化学合成される医薬品」である。構造、標的、作用部位、作用機序などが異なる様々な種類のものが開発されており、1998年に世界初の核酸医薬品が承認されて以降、2020年4月現在までに11品目(表1)が上市された。そのうち8品目の上市は2016年以降に集中しており、今後も核酸医薬品の上市が続くものと考えられる。
     安全性評価研究会の第22回春のセミナー(2019年)では、核酸医薬品の安全性評価についてのプログラムが組まれた。まず、概論として「核酸医薬品の非臨床安全性評価に関する話題」を木下 潔氏(日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 基礎研究部会、MSD株式会社)に、開示情報とCROでの経験をもとに「核酸医薬品の毒性試験」を松下聡紀氏(編集企画委員、株式会社新日本科学)に、ヒトへの外挿性の確認手法の紹介として「核酸医薬開発とヒト肝細胞キメラマウス-これまでの実績・現在の取り組み・今後の課題-」を加国雅和氏(株式会社フェニックスバイオ)に講演いただき、次いでQ&A形式での意見交換を行った。
     本稿では、当該春のセミナーにて意見交換した内容をもとに、2020年に発出された「核酸医薬品の非臨床安全性評価に関するガイドライン」(令和2年3月30日、薬生薬審発0330第1号、以下ガイドライン)1)を踏まえて追記し、まとめた。
眼科検査_毒性質問箱
  • 小野寺 博志, 友廣 雅之, 大竹 誠司, 谷本 憲昭, 佐々木 正治, 細井 一弘, 有江 裕子, 甲田 章, 鈴木 慶幸, 宮下 泰志, ...
    原稿種別: その他
    2020 年 2020 巻 22 号 p. 104-108
    発行日: 2020/09/26
    公開日: 2022/06/06
    解説誌・一般情報誌 フリー
     医薬品の副作用として失明など眼に関する重篤な毒性が発現すると、患者のquality of lifeが大きく損なわれるとともに、市場からの撤退、あるいは医薬品開発の中止に至る可能性が高いため、非臨床毒性試験における眼毒性評価は重要である。安全性評価研究会でもこれまでに眼毒性について継続した議論を行ってきた1)。眼科学的評価に関しては、通常、反復投与毒性試験において、肉眼的及び検眼鏡を用いた検査、網膜電図(electroretinography: ERG)などの視覚機能を評価する検査及び病理組織学的検査が基本的な項目としてガイドラインに規定されており2)、それらの検査で眼毒性が懸念される場合は別途適切な試験系を選択し精査が必要である。反復投与毒性試験以外の毒性ガイドラインでは眼毒性評価に関する記載は少なく、眼毒性評価の位置づけが明瞭になっていない。さらに、通常実施される一般的な非臨床毒性試験では全身のあらゆる臓器の毒性を多岐にわたり評価することから、眼科学的な試験法や所見について毒性学的評価法、判断基準に精通している毒性専門家は少ない。2019年7月に開催された第39回比較眼科学会年次大会の基礎部会セッションにおいて、比較眼科学会と安全性評価研究会の共同企画として、毒性研究者が抱いている眼毒性に関する疑問について、眼科専門家のパネリストとフロアが議論し、医薬品開発における眼毒性への考え方や試験デザイン及び評価まで幅広く理解を深める機会をもった。本稿では、同セッションで議論された内容を中心にQ&A形式で紹介する。
編集後記
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