谷本学校 毒性質問箱
Online ISSN : 2436-5114
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谷本学校 毒性質問箱
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はじめに
バイオマーカー
  • 斎藤 嘉朗, 齊藤 公亮, 荒川 憲昭
    2024 年2024 巻26 号 p. 1-6
    発行日: 2024/09/18
    公開日: 2025/11/25
    解説誌・一般情報誌 フリー

    バイオマーカーは、一般に「正常な生物学的過程(生体の維持・機能を示す過程)、病原性を示す過程、または曝露や介入(治療的介入を含む)に対する生物学的反応の指標として測定される、定義された特性を有する。バイオマーカーには、分子的、組織学的、画像的、または生理学的な特性が含まれる。個人の感覚や気持ち、生体機能、生死は、バイオマーカーには含まれない。」と定義される1)。医薬品の効率的な開発のためにはバイオマーカーの利用が重要であるが、コンパニオン診断薬以外の臨床試験においてエンドポイントに用いる等、医薬品開発ツールとしてのバイオマーカーの利用及び評価に関する規制文書は示されていない。バイオマーカー評価に関しては、一般に臨床的(または非臨床的)妥当性と分析的妥当性が必要である。その上で、臨床的(非臨床的)有用性を示すことになる。

    安全性に関するバイオマーカー(以下、安全性バイオマーカー)は、副作用の早期検出による重症化回避や重篤性の定量的把握に有用とされている。しかし、医薬品開発の段階では毒性発現により医薬品開発自体が中止となり、それに伴いバイオマーカーの開発もなされないことが多い。さらに、安全性バイオマーカーに関しては、1種類の医薬品のみでなく複数の医薬品に関する一般性の情報が重要等、特有の課題もある。

    本稿では、まず医薬品開発ツールとしての安全性バイオマーカーに焦点を絞り、その評価における留意点 を述べる。次に、薬剤性間質性肺炎のバイオマーカーを例に、その探索及び評価結果について概説する。

  • 下元 貴澄
    原稿種別: その他
    2024 年2024 巻26 号 p. 7-12
    発行日: 2024/09/18
    公開日: 2025/11/25
    解説誌・一般情報誌 フリー

    バイオマーカー(BM)は、「正常な生物学的過程、発病過程、または治療的介入を含む曝露若しくは介入に対する生物学的反応の指標として測定される明確な特性」と定義され、その目的や対象に応じて表1のように分類されている1)。独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)では、医薬品開発の効率化や製造販売後のベネフィット/リスク比の向上において有用なBMの利用を促進しており、ファーマコゲノミクス(PGx)・BM相談にて、BMの利用に関する一般的な考え方、そのBMに係るデータの適格性確認や解釈について助言等を試行的に実施している。本稿では、医薬品開発におけるBM利用に対するPMDAの取り組みについて紹介するとともに、非臨床研究で見出された安全性BM候補を医薬品開発に活用する上で考慮すべき点について紹介する。

  • 宮脇 出, 米澤 豊, 上野 貴代, 藤田 卓也, 斎藤 嘉朗, 下元 貴澄
    原稿種別: その他
    2024 年2024 巻26 号 p. 13-16
    発行日: 2024/09/18
    公開日: 2025/11/25
    解説誌・一般情報誌 フリー

    近年、医薬品に求められる安全性、有効性の水準は高まり、医薬品の研究開発が非常に難しくなってきている。その中で、バイオマーカー(以下、BM)は成功確度を上げる中心的な役割を担うに至っている。しかしながら、臨床での安全性シグナルを捉えるBMにおいては、その活用は限定的で非臨床から臨床への壁が立ちふさがっているのが現状である。本邦における医薬品開発を活性化するためには、最先端の科学技術の適用やBMの承認プロセス(加速化)を見直すことが重要だと認識している。

    今回、総合討論に先立ち、実際の現状を踏まえるべく製薬企業を対象としたアンケートを実施した。そして、そのアンケート結果を基にシンポジスト及び参加者と議論した。

審査対応
  • 佐々木 正治
    2024 年2024 巻26 号 p. 17-21
    発行日: 2024/09/18
    公開日: 2025/11/25
    解説誌・一般情報誌 フリー

    医薬品開発において規制当局と申請者はパートナーであり、互いの協働が不可欠である。申請者は医薬品開発ステージに応じて、治験届、相談資料、承認申請資料等の文書を規制当局に提出する。申請者から規制当局に提出されたこれらの文書が照会事項の起点となる。それぞれの文書には目的があり、その目的に応じた内容が記載されていることを期待されるが、その内容に不足や疑問が生じた場合に照会事項が発出される。

    承認申請資料を例にとると、記載不足のために発出される照会事項としては、例えば、本来は実施することになっている試験が実施されておらず、その根拠が記載されていない場合や規制当局にとって記載されている根拠が理解しにくい場合が挙げられる。毒性評価としての記載について期待されている内容が文書中にない場合も照会事項が発出されることがある。例えば、見られた変化を毒性でないと判断した理由に関して照会された経験をもつ申請者も少なくないと想像する。また、記載内容に疑問を生じて発出される照会事項もある。例えば、ラットでは毒性と判断したが、同じ所見をイヌでは毒性と判断していない場合、試験横断的にみると矛盾するように見えることがある。開発初期から長い間、その薬剤と付き合ってきた申請者にとっては矛盾がないことであっても、初見の規制当局が感じる矛盾を解消するためには丁寧な説明が必要な場合もある。

    このように申請者が規制当局に提出する文書が起点となって照会事項が発出されるが、発出する側の規制当局にとっても、受ける側の申請者にとっても照会事項のやり取りに多くの労力が消費されることから、照会事項は少ないのが望ましい。規制当局と申請者の目線が一致していれば照会事項の発出数も少なくなるだろう。申請者が規制当局の目線を学ぶためにできることはある。例えば、公表されている審査報告書から規制当局の目線を読み取ることや過去に発行された規制当局の審査員向けの通知から審査の視点を学ぶことが可能である。

    本稿では、公表情報をもとに、医薬品開発において非臨床担当者が遭遇する照会事項に対する筆者の知見を述べる。すなわち、照会事項発出の起点となる文書内には、何が記載されていることが期待されているか、照会事項を少なくするための工夫とは何かを共有する。なお、本稿の作成にあたり開示すべき利益相反はなく、本稿の内容は筆者の個人的見解であり、所属する組織の公式な見解ではないことを留意されたい。

  • 小野寺 博志
    2024 年2024 巻26 号 p. 22-25
    発行日: 2024/09/18
    公開日: 2025/11/25
    解説誌・一般情報誌 フリー

    本稿は著者の個人的見解であることに留意すること。

    自然界のものを個人が使用または摂取する場合、規制はなく、事故があっても個人の責任になる。しかし他人に供与する目的で製造、輸入、及び販売する化学物質、医薬品、食品添加物、並びに農薬等は行政機関から許可・認可を受け使用基準が示される。偏に国民の安全を考えての施策である。しかし、時代の背景や状況により安全性への考え方は異なる。立場の違いによる安全性の考え方の一助となれば幸いである。

  • 川村 祐司
    2024 年2024 巻26 号 p. 26-33
    発行日: 2024/09/18
    公開日: 2025/11/25
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    近年、医薬品の研究開発は新規モダリティの登場を軸として急速な進展を遂げている。革新的な医薬開発品は従来とは異なるメカニズムに基づいており、これまで十分な治療法のなかった疾患に対しても有望な可能性を秘めている。しかし、このような革新的な医薬開発品のヒトに及ぼす影響を予測することは容易ではなく、特にヒト初回投与臨床試験(first in human試験、FIH試験)において被験者の安全性を確保することがますます重要視されている。その理由は、FIH試験に参加するほとんどの被験者は健康成人であることから、治療上のメリットを得ることがなくリスクだけを負うためである。過去には英国のTGN事件1)やフランスのレンヌ事件2)において健康成人に重篤な副作用が発生し、ヒトに初めて医薬開発品を投与する行為の重大さを再認識させられた。FIH試験は、治験責任医師、医療機関スタッフ、医学専門家、治験依頼者などの治験チームにより、被験者の安全性を確認しながら実施される。また、プロトコル作成段階では被験者の安全を最優先に考えながら、試験デザイン、投与量と漸増方法、投与期間、検査項目、中止基準、安全性評価体制などが決定される。その中で非臨床毒性試験データとその解釈を基にヒトでのリスクを予測することが重要であり、毒性研究者は治験チームの一員としてその役割を果たすべきと考える。そこで、本稿では、FIH試験における毒性研究者の役割の重要性を確認するために、FIH試験で発生した重篤な有害事象、治験前の当局相談、治験届、及びプロトコル作成に関する事例を紹介したい。

Q&A
  • 西村 真理子, 原田 聡子, 藤澤 希望, 吉沢 佑基, 髙橋 圭, 梅木 優紀奈
    2024 年2024 巻26 号 p. 34-49
    発行日: 2024/09/18
    公開日: 2025/11/25
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    第31回夏の教育フォーラムでは、「徹底解説 非臨床トキシコロジー ~圧倒的講師陣による毒性試験解説と参加型演習~」のテーマのもと、講義・参加型演習が企画された。フォーラム当日は、毒性試験、医薬品開発のエキスパートによる講義を受講後、提示された演習問題について、参加者が小グループに分かれたディスカッション、参加者全員による総合討論が実施された。演習問題は2つ設定され、「プログラム1:ヒト初回投与臨床試験に向けた非臨床毒性試験の立案戦略」(2項参照)、「プログラム2:反復投与毒性試験結果の評価法」(3項参照)について、模擬データを基にグループディスカッションの形式で討論した。

    本稿では、フォーラムの演習問題の内容を一部抜粋し、ディスカッションで寄せられた意見や考え方、当日議論し尽くせなかった内容を紹介する。なお、本稿の内容はディスカッションや著者らの意見を含むことから、必ずしも正解ではなく一つの考え方として参考にしてもらえれば幸いである。

新規モダリティ
  • 香川 雄輔
    2024 年2024 巻26 号 p. 50-58
    発行日: 2024/09/18
    公開日: 2025/11/25
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    遺伝子治療は、疾患の原因を修正または補完するために遺伝子を利用する治療法である。1989年、世界初のヒトへの遺伝子治療が行われ1)、この治療は、腫瘍浸潤T細胞療法の目的でレトロウイルスを使用したものであった。1990年、先天性アデノシンデアミナーゼ欠損症患者に対して遺伝子治療製品が投与され2)、1999年に遺伝子治療製品の投与による死亡例が報告された3)。この事件は、オルニチントランスカルバミラーゼ代謝異常に適用されたアデノウイルスベクターを使用した遺伝子治療製品で発生した。2003年に中国で世界初の遺伝子治療製品(Gendicine®)が承認され、2009年にヨーロッパで遺伝子治療製品の第Ⅲ相臨床試験が成功した4)。この治療は、リポプロテインリパーゼ欠損症の治療にアデノウイルスベクターであるグリベラ®を使用したものであった。2012年、ヨーロッパでリポプロテインリパーゼ欠損症の遺伝子治療製品であるグリベラ®が承認勧告された5)。2017年、アメリカで急性リンパ性白血病とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する世界初のCAR-T(キメラ抗原受容T細胞)治療製品であるキムリア®が承認された。2019年、日本でもキムリア®とコラテジェン®が承認された。これにより、日本でも遺伝子治療が実施されるようになった。同年、アメリカで脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy: SMA)に対する全身性の遺伝子治療製品であるゾルゲンスマ®が承認された。2020年、日本においてもゾルゲンスマ®が承認された。さらに2023年、眼科疾患における初めての遺伝子補充療法のルクスターナ®が日本で承認され、様々な遺伝子治療製品が開発され続けている。これらの承認や成功例は、遺伝子治療の進歩を示しており、将来的にはさらに多くの疾患に遺伝子治療が応用される可能性がある。

臨床
  • 橋本 竜
    2024 年2024 巻26 号 p. 59-65
    発行日: 2024/09/18
    公開日: 2025/11/25
    解説誌・一般情報誌 フリー

    悪性腫瘍(がん)は、本邦の死因第1位であり、人口の高齢化を主要因として罹患数、死亡数はともに増加し続けている。がんの治療には、手術療法、薬物療法(がん化学療法)、放射線療法の三大治療がある。その中でも、がん化学療法の進歩はめざましく、従来の細胞障害性抗がん薬や内分泌療法薬以外に、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などの開発により治療の選択肢は増えた。また、がん化学療法の副作用は多岐にわたり存在する。抗がん薬の種類によって副作用発現率は異なるため、レジメンごとのマネージメントが必須となる。がん化学療法が個別化医療や精密医療に進化していく中で、副作用の支持療法に関しても進化を遂げてきた。本稿では、がん化学療法における副作用の実際と臨床薬剤師が実践する副作用マネージメントについて概説する。

編集後記
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