2011 年 2011 巻 13 号 p. 167
非臨床安全性評価のエッセンスとして、医薬品候補の毒作用の検出、有効性との開きがどの程度あるか(安全域)、検出された毒性のヒトへの外挿、毒性を客観的に確認できる指標があり、臨床試験でモニターすることができるか(トランスレーショナルな毒性バイオマーカーの必要性)、休薬による回復性を確認することなどが挙げられる。安全性バイオマーカーの役割としては、非臨床安全性試験の検出力の向上、開発化合物創製のスピードアップ、毒性-用量反応性の明示、毒性メカニズム解明の向上、臨床試験における安全性モニター、早期の意思決定、リスクの軽減した化合物の創製、臨床開発後期での開発中止の防止などがある。特に、非臨床安全性試験から臨床試験に橋渡しできるトランスレーショナルな安全性バイオマーカーの存在は、臨床試験における副作用のモニターに重要であり、現在までに未充足な臓器毒性のバイオマーカーの確立が望まれている。このため、現在、日米欧でコンソーシアムが形成され、新規バイオマーカーの確立に向けた取り組みが行われている。