2016 年 2016 巻 18 号 p. 26-29
薬物が心臓の機能に及ぼす影響について評価する際には、カテーテル法や超音波検査法といった手法を用いて測定が行われている。カテーテル法は、観血的な測定法であるため血管内にカテーテルを入れる必要がある。一方、超音波検査法では、生体に超音波をあて、その反射やドップラー効果・反響・透過の状況を確認する非観血的な測定法であるため、カテーテル法に比べ侵襲が少ない。そのため、動物への負担を軽減した心機能の反復測定が可能で、毒性試験へ組み込んで長期投与中の経時的な心機能変化を測定することができる。また、心臓の大きさや壁の厚さといった形態的な評価ができる他、心臓の壁や弁の動き、心臓内の血流情報を評価することも可能である。さらに、非侵襲的検査であるため臨床でも広く利用されており、ヒトの臨床試験で得られたデータを非臨床試験においても同じ測定方法で得られたデータと比較することが可能である。
本稿では、薬物投与時の超音波検査法とカテーテル法のデータの比較、モデル動物作製時の心臓の壁や弁の動き並びに心機能の変化など、超音波検査法を用いて測定した動物のデータを紹介し、心臓超音波検査法による薬物安全性評価の有用性について考察する。