2016 年 2016 巻 18 号 p. 64-70
毒性質問箱17号(サイエンティスト社、2015年)において「一般毒性試験における遺伝毒性評価:組込み試験の可能性と課題」と題した濵田先生のレクチャーを掲載した。17号のレクチャーでは、肝臓小核試験は、優れた遺伝毒性検出力を示すこと、反復投与により小核を有する肝細胞(肝小核)が蓄積すること及びその組込みが一般毒性評価に影響しないことを紹介した。すなわち、肝臓小核試験は、反復投与毒性試験における遺伝毒性指標としての意義が高く、また反復投与毒性試験に組込みが容易なことから、医薬品の安全性評価に有用であると考えられた。この肝臓小核試験へ読者の高い関心が寄せられたことから、2015年冬のセミナーにおいて、濵田先生に「4週間の反復投与毒性試験結果(肝臓小核試験及び病理組織学的検査)から肝発がん性を予測する」というタイトルで講演を頂いた。本セミナーでは、肝臓小核試験の遺伝毒性指標としての有用性に留まらず、2週あるいは4週間の反復投与毒性試験における肝臓の病理組織像と併せて評価することで、化合物の肝発がん性を予測するという画期的な提案がなされた。セミナー参加者からの反響は大きく、多数の質問・意見が寄せられたが、質疑応答の時間では十分な議論が行えなかった。
そこで後日、濵田先生と面談し、編集企画委員会でまとめた質問・意見に対するコメントを頂いた。 濱田先生のコメントは詳細かつ多岐に渡ったため、本稿ではその内容をQ&A形式で要約して紹介する。 なお、肝臓小核試験の方法や結果の詳細については毒性質問箱17号及び公表論文1) を参照されたい。