谷本学校 毒性質問箱
Online ISSN : 2436-5114
心血管系安全性評価
イオンチャネルに対する影響評価と心毒性
吉永 貴志
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2021 年 2021 巻 23 号 p. 57-62

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抄録

 2018年12月に開催された安全性評価研究会・冬のセミナーで講演した。講演を依頼された背景としては、当時(そして現在も)、私がICH E14/S7B Implementation Working Group(IWG)の日本製薬工業協会トピックリーダーとして議論に参加しているからであると理解している。このICH E14/S7B IWGは、E14 Q&Aを作成するために2005年に設立されたICH E14 IWGの活動が継続している状況で、2013年にFDAから提案されたComprehensive in vitro Proarrhythmia Assay(CiPA) initiative1)をきっかけにICH E14/S7B Discussion Group(DG)が設立され、その後2018年に開催されたICHシャーロット会議を経て設立された。IWG発足のきっかけになったCiPAは、臨床における催不整脈リスク評価を非臨床の複数試験データを用いた統合的判断によって実施することを目的としてCardiac Safety Research Consortium/Food and Drug Administration/Health and Environmental Sciences Institute(CSRC/FDA/HESI)の合同会議の場で提案された。会議ではICH E142)及びS7Bガイドライン3)の施行以降の状況の総括が背景として提示され(表1)、総合的に判断した結果として、ICH E14の廃止とICH S7Bの改定が提案された。ポイントとしては、QT延長そのものを評価するのではなく、催不整脈リスク、特に重篤な心室性不整脈であるTorsade's de pointes(TdP)の発生リスクを評価するべきである、という明確なメッセージであった。現ICH S7BにQT延長に関する非臨床試験の進め方の概念図が示されているが(図1)、これには明示されていない(1)複数の心筋イオンチャネル阻害データによるアセスメント、(2)in silicoモデルによるリスク予測、(3)ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた評価など、複数の非臨床試験結果を用いた統合的リスク評価の有用性がCiPAから提案された。なお、本稿でいう心毒性とは、QT延長に伴い発生するTdPの催不整脈性に焦点を当てている。

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© 2021 安全性評価研究会
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