2020 年 2020 巻 292 号 p. 59-61
エッジは炭素材料の活性点であり,そこには種々の含酸素官能基が結合している。炭素材料の機能材料への用途を考えた場合,特性の発現,あるいは劣化機構を理解するうえで,エッジ及び官能基の評価は必須であるといえる。しかしながら,それらの定性かつ定量的評価はこれまでの研究で未だなされていない。本学位論文ではそれらの評価手法の確立を目的とし,研究結果をまとめた。
本学位論文は五つの章で構成されている。第一章では緒論とし,炭素材料のエッジと表面官能基,それらの従来の評価手法等について述べた。第二章では,試料として膨張化炭素繊維(ExCFs)を用い,昇温脱離(TPD)及びXPS測定を組み合わせて官能基の分解挙動を調べた。その結果,ExCFsの評価を行う場合,既知の官能基の分解温度を参考にガスの放出挙動の波形分離を行う妥当性を見いだした。第三章では,炭素材料のエッジの評価における昇温還元(TPR)法の適用についてまとめた。エッジの定量評価を行う前処理としてTPR法に置き換えることを試みた。その結果,熱処理に伴うエッジ付近が構造変化し得る場合,より正確なエッジの評価が可能であることが明らかとされた。第四章では,さらに詳細なエッジの評価手法についてまとめた。水素及び水素を含む官能基はTPO法により,含酸素官能基はTPD法によりそれぞれ定量し,エッジの定量と,そこに結合した化学種の同定・定量を可能とした。第五章では,種々の酸化処理を施したエッジの評価についてまとめた。本手法では出発材料が有するエッジ及び官能基量の評価,また熱処理や酸処理といった後処理が反映されたエッジ及び官能基量の詳細な評価に対し有効であることを見いだした。本稿では,第二章から第五章について記述する。