待遇コミュニケーション研究
Online ISSN : 2434-4680
Print ISSN : 1348-8481
研究論文
ビジネス場面における普通体と笑いの共起
部下役のタイ人と日本人の普通体の使用文脈と機能に着目して
チッターラーラック チャニカー
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2024 年 21 巻 p. 1-15

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抄録

本研究では、ロールプレイ手法を用いたタイ人と日本人による社内会話データと、日本人同士の社内会話データを扱い、丁寧体基調の会話における、それぞれ部下役であるタイ人と日本人の普通体使用を取り上げた。その会話データにおける普通体使用及び笑い伴いの普通体使用に着目し、普通体の使用文脈と機能を分析した。タイ人と日本人による普通体の使用文脈を分析した結果、タイ人は【内容追加・例挙】、【質問・答え】、【繰り返し・引用】という文脈において普通体を多用したことがわかった。一方、日本人のデータには【繰り返し・引用】、【内容追加・例挙】、【情報提供】という文脈で普通体が多く使用されたことが見られた。この結果から、タイ人と日本人は共に情報やりとりの文脈において普通体を多用したことが明らかになった。また、タイ人による普通体には日本人より笑い伴いの使用が多く見られた。そして、使用された普通体の機能を考察すると、タイ人と日本人の両方に、情報を整理することや、理解を示すことなどをする目的とした《情報整理》と、率直な感情を表すという《感情表出》の2つの機能が確認できた。よって、タイ人と日本人による普通体使用には、《情報整理》と《感情表出》があったということが共通していると言える。しかし、新しい話題に展開させるという文脈における普通体使用はタイ人にのみ確認でき、さらにその普通体使用に《談話標識》の機能が見られた。また、笑い伴いの普通体使用から、その笑いで会話内容に楽しさや面白さを加えたり、会話を盛り上げようとしたりするという特徴についても考察できた。以上のように、本研究では、タイ人と日本人による普通体の使用文脈と機能の特徴が明らかになった。そして、日本語教育現場での普通体指導と、ビジネス場面において使用可能な普通体の使い方について再考する余地があると考える。

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