待遇コミュニケーション研究
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研究論文
  • 部下役のタイ人と日本人の普通体の使用文脈と機能に着目して
    チッターラーラック チャニカー
    2024 年 21 巻 p. 1-15
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり

    本研究では、ロールプレイ手法を用いたタイ人と日本人による社内会話データと、日本人同士の社内会話データを扱い、丁寧体基調の会話における、それぞれ部下役であるタイ人と日本人の普通体使用を取り上げた。その会話データにおける普通体使用及び笑い伴いの普通体使用に着目し、普通体の使用文脈と機能を分析した。タイ人と日本人による普通体の使用文脈を分析した結果、タイ人は【内容追加・例挙】、【質問・答え】、【繰り返し・引用】という文脈において普通体を多用したことがわかった。一方、日本人のデータには【繰り返し・引用】、【内容追加・例挙】、【情報提供】という文脈で普通体が多く使用されたことが見られた。この結果から、タイ人と日本人は共に情報やりとりの文脈において普通体を多用したことが明らかになった。また、タイ人による普通体には日本人より笑い伴いの使用が多く見られた。そして、使用された普通体の機能を考察すると、タイ人と日本人の両方に、情報を整理することや、理解を示すことなどをする目的とした《情報整理》と、率直な感情を表すという《感情表出》の2つの機能が確認できた。よって、タイ人と日本人による普通体使用には、《情報整理》と《感情表出》があったということが共通していると言える。しかし、新しい話題に展開させるという文脈における普通体使用はタイ人にのみ確認でき、さらにその普通体使用に《談話標識》の機能が見られた。また、笑い伴いの普通体使用から、その笑いで会話内容に楽しさや面白さを加えたり、会話を盛り上げようとしたりするという特徴についても考察できた。以上のように、本研究では、タイ人と日本人による普通体の使用文脈と機能の特徴が明らかになった。そして、日本語教育現場での普通体指導と、ビジネス場面において使用可能な普通体の使い方について再考する余地があると考える。

  • 海外で日本語を学ぶ学生と日本の大学に通う日本人大学生の会話
    釜田 友里江
    2024 年 21 巻 p. 16-32
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり

    本研究は、日本語学習者と日本人学生の交流場面における会話を分析する。以下の2点に焦点を当てる。①どのような経験が語られるか。②語りに対してどのような共感的な反応がみられるのか。①について、交流場面(日本語学習者と日本語母語話者)においては、面接のような質疑応答(中井・夏2021)や母語話者からの質問→学習者による応答→母語話者が評価(鈴木2022)のようなかたちになり、話が弾まないことが指摘されている。②の語りに対する共感的な反応についても、苦労話などに対する反応が薄く、関係構築が難しくなるという問題点が、中井・夏(2021)によって報告されている。本研究は、交流場面において①と②の特徴を明らかにすることを目的とする。実際の交流場面の会話を会話分析の手法を用いて分析する。

    会話データを分析した結果、以下の特徴が明らかになった。①については、互いに共通すること(コロナ禍での大学生)や自らの経験(愚痴や最近驚いたことなど)である。それに加え、「自らの経験+自国の文化紹介」の語りがみられた。自国の文化紹介を行う際に、単に情報提供として提示するのではなく、面白いこととして文化を導入している。面白いこととして語ることによって、聞き手が反応しやすい状況を作っている。また、自らの経験に関連させながら文化を紹介することで、知識量の差を相手に感じさせずに対等な立場から語ることができる。このような語り方から、「相手に教える⇔相手から学ぶ」という構造ではなく、互いに「学ぶ⇔学ぶ」という構造ができ、交流場面においてどちらも経験が語りやすくなることがわかった。②については、「相手の経験+文化」として聞くことで、相手を理解しようとすると同時に会話相手の文化への興味も深まることが示唆された。また、相手の経験に寄り添うような反応もみられた。このような積み重ねは、コミュニケーションの円滑さだけでなく、会話相手と会話相手の国ついても知ろうとする気持ちが伝わり、関係構築において重要な役割を果たしているといえる。

  • 韋 夢瑶
    2024 年 21 巻 p. 33-49
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり

    日本語学習者は、様々な接触場面におけるコミュニケーションを通し、「場面」(人間関係や場)の認識が変容する可能性がある。本研究では、中国人上級日本語学習者が、接触場面で依頼を行った際に生じた「失敗感」に関する事例を採り上げ、接触場面で失敗を経験した学習者が、コミュニケーションに対する自身の内省と、実際の接触場面に関与しない「他者」の考えを知った後の失敗事例に対する待遇意識の変容を明らかにした。

    4人の中国人上級日本語学習者を対象として、彼らの「失敗感」を持った事例についてインタビューをし、分析を行った。学習者の内省と「他者」の視点から生じた意識の変容を明らかにする際、より詳細な意識を聞き出すために、インタビュー調査では、学習者の母語(中国語)と目標言語(日本語)による通訳を入れた。

    結果として、以下の3点が得られた。①学習者は、内省を通し、コミュニケーションに対する理解を深めることができるが、そこには限界があり、ネガティブな感情が生じることもある。②接触場面で「失敗感」を持った学習者は、他者の考え方を知ることを通して、経験したコミュニケーションに対する理解を深めつつ、落ち込む気持ちから解放されることができる。③本研究で提示した学習者の母語と日本語の通訳を調査に採り入れる方法は、学習者の待遇意識を聞き出し、深める際に有効である。

    今後の待遇コミュニケーション教育において、学習者は他者との関わりを通して、自分自身の経験を再認識するという学びの方法が考えられる。具体的には、日本語学習者が自身の言語生活からの経験を教室活動に持ち込み、他者の考えを知ることを通して、自身の悩みを解決するといった方法である。その際に、日本語による対話活動のみならず、文章や母語を介する方法も効果的だと思われる。

特別寄稿
  • 文法化と敬意漸減の影響
    椎名 美智
    2024 年 21 巻 p. 50-65
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり

    「させていただく」は使役の助動詞「させる」と授受動詞「いただく」が連結の「て」で結ばれた連語で、自分の行為をへりくだる時に使われる。汎用性が高く盛んに使われるうちに本来の使い方とは異なる用法が出現し、「違和感がある」と批判される用法が出てくるまでになった。椎名(2021)は「させていただく」への違和感調査とコーパス調査を実施し、使用状況の変化を歴史語用論的に検討した。その結果、「させていただく」が「謙譲語」から「丁重語」へと変化してきたと考え、本来の「丁重語」と区別して「新・丁重語」と呼んだ。滝浦(2022c)はさらに「美化語」にまで変化している場合もあるとしている。本論考では、丁重語化・美化語化した「させていただく」に「シン・させていただく」という愛称を付け、これまでの研究成果を辿りながら、それが敬語史上の単なる徒花ではなく、連綿と続いてきた敬意漸減の影響を受けて変化し続ける「させていただく」の姿であることを示す。

    「違和感がある」と批判されるのは、芸能人が記者会見で使う「〜さんとお付き合いさせていただいております」、政治家が釈明時に使う「お答えは差し控えさせていただきます」といった用例である。これらの例での「させていただく」は自己完結的な動詞と共起し、元々備わっていた恩恵や許可の意味合いは薄れている。ここでの「させていただく」は、へりくだることによって相手への敬意を示しているというより、丁寧な物言いによって自分の丁寧さを示していると解釈できる。ここにゴフマンの「表敬」と「品行」という概念(Goffman 1967)を援用すると、「表敬」の敬語から「品行」の敬語への変化と捉えられる。これは日本語の敬語全体に当てはまる変化かもしれない。

    ここでは授受動詞の補助動詞用法を山田(2004)に倣ってベネファクティブと呼ぶ。また、授受動詞の前に使役の助動詞「させる」のついた形もベネファクティブに含める。

  • 件名・宛名・書き出しの観点から
    石黒 圭
    2024 年 21 巻 p. 66-81
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり

    本稿は、海外の大学で日本語学習者の作文の収集を行うW-CoLeJaプロジェクトの一環として、中国国内の大学で収集を行ったメール文の分析結果を報告する。メール文の調査は2023年春に二つのクラス、計47名にたいして実施されたもので、学習者はメール文を事前課題として書いたあと、そのメールにかんする授業を受講し、事後の書き直しを行っている。調査ではメールによる一連のやりとりが想定され、日本にいる講師への講演の依頼、講演受諾後の講演日時の調整、講演終了後のお礼メールの送付という三つの課題に分かれているが、本稿は、その最初の課題である講演依頼のメールを、件名・宛名・書き出しという三つの観点から分析したものである。

    分析の結果、事前課題のメールでは中国語や中国文化の影響を受けた誤りが多く見られた。件名では、「講演」のかわりに「講座」が、「お願い」のかわりに「誘い」「招待」「案内」などが使われて書き手の依頼意図が伝わりにくくなったほか、「~のメール」といった無駄な要素がつくもの、「講演の誘う」のような名詞化がうまくいかないものなどが見られた。また、宛名では、「尊敬する」を宛名のまえに、「:」のような記号を宛名のあとにつけるもののほか、宛名自体がないもの、所属がないもの、名字のみのもの、「先生」ではなく「教授」「様」「さん」をつけるものなど、誤りとは言いがたいが、受け手に違和感を与えるものが見られた。さらに、書き出しでは、「こんにちは」「お元気ですか」といった挨拶におけるあらたまりの不足や、名乗るさいに所属先だけで済ませたり「~と申します」を使えなかったりするなどの敬意の不足が見られた。こうした困難点は、授業指導のなかで大きく改善されたが、一方で、メール文自体の多様性が損なわれ、型にはまったメールになるという弊害も見られた。今後は、そうした教室指導の長所と短所を踏まえた指導法の提案が求められる。

運営委員会企画
  • 蒲谷 宏, アドゥアヨムアヘゴ 希佳子, 任 ジェヒ, 徳間 晴美
    2024 年 21 巻 p. 82-100
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり

    本稿は、待遇コミュニケーション、および、それに関する教育・研究における「丁寧さ」とは何か、「丁寧さ」をどのように捉えればよいのかについて考察したものである。考察のための方法としては、これまでに行ってきた議論や先行研究、辞典・事典類やコーパスなどの調査結果を踏まえつつ、その最終段階で「KJ法」を援用した。

    まず、考察の前提として、内省とコーパスを用いる利点と問題点について述べ、次に、

    「丁寧さ」の捉え方の留意点と段階性について考察した。実際の待遇コミュニケーションにおける「丁寧さ」とそれを個々のコミュニケーション主体がメタ的に捉えることとは、関連はするが、それらは別の段階にあるものとして捉える必要がある。

    待遇コミュニケーションにおける「丁寧さ」を考えると、その基本的な枠組みとなる、【前提】―コミュニケーション主体―【場面】―意識―内容―形式のすべてにわたって関わるものであることがわかる。「丁寧さ」は、待遇コミュニケーションの枠組みとなる諸要素と個別に、そしてコミュニケーション行為全体と関わるものであり、そのことが、「丁寧さ」の持つ多様性と多重性として複雑に絡んでくるのではないかと考えられる。

    「丁寧さ」は、表面的、形式的な言葉遣いを丁寧にすることが問題なのではなく、その根底にある考え方や姿勢が重要なのだといえる。その点を抜きにして、表面的、形式的な言葉遣いやコミュニケーションにおける「丁寧さ」だけを扱うことには意味がないだろう。

    また、「丁寧さ」は、絶対的・固定的に捉えられるものではなく、相対的・動態的なものであり、それぞれのコミュニケーションにおいて、常に変容するものだと考えられる。

    待遇コミュニケーション研究において「丁寧さ」を明らかにしようとするのは、それが待遇コミュニケーションのすべてのあり方に関連することだと考えるからである。ただし、教育においては、適切な「丁寧さ」を学ぶことは重要であるとしても、それは、他の学びと同様、個々のコミュニケーション主体の主体的なものでなくてはならないだろう。

    待遇コミュニケーションの実践、教育、研究において、「丁寧さ」というものを具体的にどのように活かしていくのかについては、今後の重要な検討課題になるといえる。

2023年待遇コミュニケーション学会春季大会・秋季大会研究発表要旨
  • 「意識」と「形式」の連動に着目して
    佐々木 瑛代
    2024 年 21 巻 p. 101
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり

    本発表では、日本国外の大学で日本語を学ぶ日本語学習者が、どのような形式を選択し会話を円滑に進めるための自己表現と他者理解をしているのか、またそれは日本語学習者のどのような場面の位置づけと待遇意識と連動しているのかを明らかにする。

    本研究では、中国語母語話者であり、アメリカの大学で日本語を学んでいる上級レベルの日本語学習者2名と日本語教師である日本語母語話者2名を、それぞれ学習者と母語話者のペアにし、「日本語母語話者に質問する場面」と「雑談の場面」という設定された異なる2つの場面での会話を録音した。また、会話録音後一週間以内に、日本語学習者に対し、録音した会話を再生しながらインタビューを行った。インタビューの音声データはすべて文字起こしを行い、質的データ分析の手法である大谷(2019)のSCATを用いて分析した。

    分析の結果、日本語学習者は、自己表現として、相手レベルと場レベルの細かい調整をしていることが明らかになった。日本語学習者は、相手を「(日本語の)先生」と位置づけた上で、相手レベルの調整として、デスマス形基調の選択や質問発話のみでの敬語使用をしていた。質問場面から雑談場面に移行した際には、場レベルの調整として、中途終了型発話の使用や敬語不使用の選択をしていた。また、この自己表現は、会話の相手に対する他者理解とも繋がっていた。具体的には、日本語教師の表情、あいづちによる積極的傾聴、間違いの不指摘によるスムーズな会話進行などを通して、日本語学習者は自分が「尊重されている」と感じており、それが自己表現に繋がっていたことがわかった。

    さらに、質問場面においては、実際の形式からはわからない場面の位置づけと待遇意識との連動が明らかになった。日本語学習者は、質問場面において、形式の段階での敬語使用の回避をしており、実際の会話ではほとんど敬語使用は見られなかった。しかし、学習者Aは、質問内容との連動による質問場面の位置づけ、学習者Bは、質問者という立場との連動による質問場面の位置づけにより、待遇意識の段階では敬語使用を選択しようという意思があったことがわかった。このことから、異なる場面での同一の相手との会話において、日本語学習者は細かい相手レベルと場レベルの調整をしており、実際の形式からはわからない場面の位置づけと待遇意識との連動があることが明らかになった。

  • 学習者の待遇意識を明らかにするための基礎研究の方法
    韋 夢瑶
    2024 年 21 巻 p. 102
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり

    待遇意識は、蒲谷(2013)において、「人間関係の位置づけをした上で,それをコミュニケーション主体自身がどう捉え,どのように待遇コミュニケーションにつなげようとするかという意識である」(p.37)と定義されており、待遇コミュニケーションを考えるための重要な枠組みの一つとなる。これまで、第三者の視点を入れて意識調査を行う必要性が指摘されているが、より有効な方法についてまだ十分に論じられていない。本研究では、中国人上級日本語学習者が、接触場面で依頼を行った際に生じた「失敗感」に関する事例を採り上げ、以下の2つの研究課題を明らかにした。①:「失敗感」を持った学習者(以下:「経験者」)は、接触場面で依頼を行う際に「失敗感」が生じた経験の後、自らの待遇意識がどのように変容したのか。②:「経験者」は、その経験に対する他者(以下:「他者」)の考えを知った後に、自らの待遇意識がどのように変容したのか。

    調査の流れは、以下のようになる。調査①:「経験者」4人(A、B、C、D)にインタビュー調査を行った。事例の詳細、及び、事例を経験し、独自の内省を経た後の待遇意識を尋ねた。「経験者」に内容を再度確認した後、事例を文章化した。調査②:文章を通し、経験の内容を「他者」(学習者、母語話者)に伝え、事例に対する「他者」の考えをインタビューで尋ねた。調査③:「他者」(学習者、母語話者)の考えを「経験者」に伝え、「経験者」の待遇意識を尋ねた。なお、より明確な意識を聞き出すために、インタビュー調査は、協力者の母語で行われた。分析では、研究課題に沿って各事例の「経験者」の意識をカテゴリー化した。その後、各カテゴリー間の関係を検討し、文章化した。

    分析を通し、以下の結論が得られた。①「経験者」は、内省を通し、コミュニケーションに対する理解を深めることができるが、限界があり、ネガティブな感情も生じることがある。②「経験者」は、「他者」の考え方を知ることを通して、経験したコミュニケーションに対する理解を深めつつ、落ち込む気持ちからも解放されることができる。③学習者の待遇意識を聞き出し、深める際に、母語と日本語の通訳を調査に採り入れる方法は有効である。こうした方法は、今後の日本語教育の実践での応用が期待されている。

  • コメントをする表現主体の「前提」を中心に
    曺 旼永
    2024 年 21 巻 p. 103
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり

    学術的文章に対するコメントや検討に関する研究は、実践や文章をより良くすることを目指し、様々な観点から議論がなされてきた。しかし管見の限り、学術的文章に対するコメントのコミュニケーションの経験には、あまり焦点が当てられていない。コミュニケーションをどのように捉えたのかは、相手に伝えないことも多く、表面的なやりとりからは捉え難い部分がある。また、コミュニケーションが良い経験や「気になる経験」に繋がる場合、その要因はコミュニケーションが行われる場で生じるとは限らない部分がある。

    以上を踏まえ本発表では、蒲谷他(2019)の「前提」を参照として、学術的文章に対するコメントのコミュニケーションの経験を捉えた。具体的には、コメントをする表現主体としての経験(対面・非対面を含む)に注目し、良い経験と「気になる経験」の要因に見られる「前提」を分析した。分析では、学術的文章に対するコメントのコミュニケーションの経験がある7名(日本語母語話者4名/日本語非母語話者3名)の半構造化インタビューでの語りを、佐藤(2008)を援用してコーディングした。

    分析結果、コメントをする表現主体の良い経験と「気になる経験」の要因に見られた「前提」のカテゴリーが提示された。まず、良い経験と「気になる経験」に共通して見られたカテゴリーとして、《コメントのコミュニケーション自体に対する認識や捉え方》が提示された。次に、個別の経験に見られたカテゴリーとして、「気になる経験」では、《コメントに対する相手の反応》が見られ、良い経験では、《コメントをする主体自身への良さ》が見られた。分析結果を通して、学術的文章に対するコメントのコミュニケーションの経験の判断や評価に「前提」が深く関わっており、学術的文章に対するコメントのコミュニケーションを見ていく際、「前提」に目を向ける必要性があることや、その重要性が示唆された。

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