2025 年 22 巻 p. 213
本発表では、インタビュー調査に基づいて作成したパターン・ランゲージ(井庭2013)と呼ばれる知の記述法を通じて、難民支援としての日本語教育・難民を対象とした日本語教育におけるネガティブ・ケイパビリティ(以下、NC)の重要性に関する主張を行った。
帚木(2017)によれば、NCとは「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」「性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力」である。パターン・ランゲージ作成の際には、「ある文脈がある」ときに「問題が起きやすい」ので、そこで「ある解決策をとる」といった記述を、インタビューデータをもとに行っていく。本研究では、以下の記述が得られた。
難民的背景を持つ人々は、日本での生活が安定していないことがあります。また、そもそも日本を目指して逃れてきたわけではない人もいて、日本で生活を立ち上げていこうという気持ちになることができない人に出会うことも少なくありません。
▼そういうときに
日本語教師として関わっていても、他の場面のようには成果が得られないと感じることがあるかもしれません。また、学習者を責めるような気持ちになってしまったり、日本語教師としてできることの限界を感じたり無力感を覚えたりして関わること自体やめてしまいたくなったりすることもあるかもしれません。
▼そこで
目の前の状況や日本語力に囚われて一喜一憂するのではなく、長期的な視野にたって関係性をつくっていくことにまずは注力します。これまでの日本語教師としての経験や常識は一旦留保して、焦らずに人間関係や場、学ぶ環境やお互いの心の環境を整えていきます。
ただし、NCの重要性が頭で理解できたとしてもそれを実践するのは容易ではない。今後はさまざまな実践知についても描き出し、実践知の記述の精緻化・体系化を進めるとともに、NC発揮の支援のあり方についても検討していきたい。
なお、本研究はJSPS科研費JP23K01947の助成を受けたものである。