天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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海洋シアノバクテリア由来のマクロリドbiselyngbyaside類の単離と生物活性
森田 真布大野 修渡邊 絢音杖田 淳子矢守 隆夫豊島 近末永 聖武
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p. Oral39-

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抄録

【概要】

 シアノバクテリアは光合成を行うグラム陰性細菌であり、これまでにも数多くの生物活性物質が発見されてきた。海洋のシアノバクテリアは培養が難しいとされ、我々のグループでは自然界から採取したサンプルを用いて生物活性物質の探索研究を進めてきた。

 その中で最近、鹿児島県および沖縄県で採集したシアノバクテリアLyngbyasp. (Figure 1)より、ヒトがん細胞に対して強い細胞増殖抑制活性を示すマクロリドbiselyngbyolide A (4)1およびB (2)2、biselyngbyaside B (3), C (5), D (6)3を単離した (Figure 2)。これらは、2009年に当研究室で構造決定されたbiselyngbyaside (1) 4の類縁体として初めて単離された化合物である。biselyngbyasideは新奇な骨格をもつ18員環マクロリドであり、最近では禹らにより破骨細胞に対する分化抑制活性が報告されるなど5、その生物活性に関心が寄せられている。今回我々は、biselyngbyaside類 (2-6)の単離・構造決定および生物活性評価を行い、構造活性相関の知見を得ることができた。また、ヒトがん細胞パネルスクリーニングを糸口として、これまで明らかになっていなかった作用機序の解明に取り組んだ。その結果、biselyngbyaside類は小胞体膜上のカルシウムポンプを標的として、腫瘍細胞に対して小胞体ストレス誘導性のアポトーシスを引き起こすことが明らかになった。詳細について報告する。

Figure 2. Structures of biselyngbyasides isolated from the marine cyanobacterium Lyngbya sp.

1. biselyngbyaside類の単離・構造決定

 採集したシアノバクテリアを用い、ヒト子宮頸癌細胞(HeLa細胞)に対する増殖抑制活性を指標にして生物活性物質の探索を行った。鹿児島県徳之島産のシアノバクテリアLyngbya sp.(湿重量400 g)をメタノールで抽出し、得られた抽出物を酢酸エチル/水で分配した後、有機層をさらにヘキサン/90%メタノールで分配した。その結果、90%メタノール画分に顕著な細胞増殖抑制活性が認められた(IC50 < 0.1 mg/mL)。そこで本画分を各種クロマトグラフィーで分離・精製したところ、biselyngbyolide A (4, 30.8 mg), biselyngbyaside B (3, 1.2 mg), C (5, 0.9 mg), D (6, 0.2 mg)を単離した (Figure 2)。一方、biselyngbyolide B (2, 0.7 mg) は沖縄県石垣島で採集したLyngbyasp. (湿重量200 g)より、3-6と同様の手法で単離した。

 biselyngbyaside類は無色油状物質として得られた。ESIマススペクトルによりbiselyngbyolide A (4)の分子式はC27H42O5であることが分かった。

続いて、各種二次元NMRスペクトルの解析により平面構造を明らかにした。その結果、4は18員環マクロリドであり、biselyngbyaside (1)のアグリコンが水和を受けた構造の新規類縁体であることが分かった(Figure 3)。

 続いて、4の相対立体配置を結合定数とNOESYスペクトルにより推定し、絶対立体配置は既知化合物1 とのCDスペクトルの比較により決定することとした。得られた4の相対立体配置を下図に示す (Figure 4)。4のC3-C5の1,3-ジオールはアセトナイド7へと誘導し、H3, H5がsynであることを確認した。これにより、4におけるC3, C7, C10, C17の相対立体配置は1と同

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© 2014 天然有機化合物討論会電子化委員会
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