天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
56
会議情報

リボソームと新規ペプチドライゲースによる協同的ペプチド生成機構
野池 基義松井 崇雄谷 洸一佐々木 郁雄丸山 千登勢濱野 吉十石川 淳佐藤 康治伊藤 肇森田 洋行大利 徹
著者情報
会議録・要旨集 フリー HTML

p. Oral8-

詳細
抄録

【目的】 ペプチド系抗生物質の生合成では、リボソーム関与の生合成に加え、Non Ribosomal Peptide Synthase(NRPS)に代表されるリボソーム非関与の生合成機構も用いられる。また、近年、ATP依存のアミノ酸リガーゼやtRNA依存のアミノ酸転移酵素によるペプチド結合生成機構も報告されている。このようにペプチド系抗生物質の生合成には多様性があるが、ペプチドの基本骨格そのものは上記の何れかの機構で生合成される。

放線菌が生産するペプチド系抗生物質、pheganomycin(PGM、下図)は、N-末のL-3,5-dihydroxy-amidino-phenylglycine(DHPG)誘導体に、何れもL-体からなるAsn-tertiary Leu-Lys-Asp-Arg、あるいはAsn-tertiary Leu-Lys-Asp-Gly-Pro-Thrが結合した2種類が知られている1。tert-Leuは、最近bottromycinの生合成研究で明らかにされたように2,3、radical S-adenosyl methionine (SAM)酵素によるVal側鎖のメチル化により生成すると推定されることから、DHPG のみが非タンパク性のアミノ酸と考えられる。PGMの生合成を考察すると、非タンパク性のDHPGを含むことからNRPSで生成すると推定されるが、一般にアミノ酸をアデニル化するNRPS のA-ドメインの基質認識は厳密であり、どのように2種類の配列からなるペプチドが生合成されるか興味が持たれたことから、その生合成機構の解明を試みた。 

 【方法および結果】 バンコマイシンに含まれるDHPGの基本骨格は、DpgAからDpgCにより生合成されることが報告されている(下図)4。そこでこれら遺伝子のオーソログをPGM生産菌のドラフトゲノム配列中に探索した結果、生合成遺伝子クラスターを見出した(次ページ図)5。本クラスターには、DHPG誘導体の合成に関与すると推定される、DpgC反応に続くアミノ基転移酵素、アミジノ基転移酵素、4位メチル化と水酸化酵素遺伝子(P450)、また、Val側鎖のメチル化に関与すると推定されるradical SAM酵素遺伝子が存在した。しかし、最長8つのアミノ酸からなるNVKDGPTを合成し得る巨大なNRPSを近傍に見出せなかった。そこで、クラスター内にペプチダーゼが存在したことも考慮し、ペプチド部分がリボソーム関与で合成される可能性を考え塩基配列を精査した結果、38アミノ酸からなる遺伝子を見出した。このペプチドはNVKDRとNVKDGPTの両方の配列を含んでおり、C-末の多様性を矛盾なく説明できた。

そこで次に、本クラスターがPGMの生合成に関与することを証明するために、プレカーサーペプチドをコードする構造遺伝子の破壊を行った。相同組換えにより構造遺伝子のみを欠失させた株を構築した結果、PGMの生産性が消失したことから、PGMのペプチド性アミノ酸からなるC-末部分は、リボソームにより合成されたプレカーサーペプチドに由来すると考えられた5

しかし、N-末のDHPG誘導体とプレカーサーペプチドから供給されたペプチドの結合を触媒する酵素に関しては候補遺伝子を見出せなかった。クラスター内には、A-ドメイン1つを持つNRPS-A(649アミノ酸)、T-ドメインを持つNRPS-T(89アミノ酸)、C-ドメインを持つNRPS-C(441アミノ酸)が存在した(上図)。これまでNRPSのA-ドメインで活性化されたアミノ酸類に対し、ペプチドが求

(View PDFfor the rest of the abstract.)

著者関連情報
© 2014 天然有機化合物討論会電子化委員会
前の記事 次の記事
feedback
Top