天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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カイメンTheonella swinhoei由来新規細胞毒性ペプチドnazumazoles A-Fの単離と構造決定
福原 和哉高田 健太郎岡田 茂松永 茂樹
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p. Oral18-

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抄録

【概要】

 カイメンTheonella swinhoeiからはこれまで40種を超えるポリケチドやペプチドが得られており、現在においても有用物質の探索源として期待されている。1, 2加えて近年、これらの二次代謝産物の多くをEntotheonellaという難培養性の共生微生物が生産していることが明らかとなった。3この研究により、カイメンには高い化合物生産能を持つ共生微生物が存在することが示され、これらの共生微生物は新たな生物資源として利用できる可能性がある。

 我々はメタボロミクスをカイメンに適用し、生物活性を示す海洋天然物を効率的に探索している。これまでに約1500の抽出物をLCMSで分析するとともに、その含有成分組成を解析し、各試料間での比較をおこなった。本研究はその一環として、T. swinhoeiの抽出物をLCMSで分析し、含有成分のODSカラムへの保持時間、UV吸収スペクトル、分子量を指標として新規細胞毒性物質を探索した。その結果、新規の細胞毒性ペプチドnazumazoles A–C (1–3)4 およびその類縁体nazumazoles D–F (4–6) を発見し、それらの構造を決定した (Figure 1)。

Figure 1. The structures of nazumazoles A–C (1–3) and nazumazoles D–F (4–6).

【Nazumazoles A–C (1–3) の単離】

 八丈島ナズマド産カイメンT. swinhoeiをメタノールで抽出し、LCMSで含有成分を分析した。その結果、ODSカラムから幅広いピークとして溶出し、m/z 1185, 1199, 1213 (M + H)+ を示す成分を発見した (Figure 2)。そこで、カイメン抽出物から、溶媒分画、各種カラムクロマトグラフィー、HPLCによって、当該ピークをnazumazoles A–C (1–3) の混合物として単離した。この混合物はP388マウス白血病細胞に対して毒性を示したので、その構造決定を行った。

【構造解析】

 HRESIMSにより、1–3の分子式をそれぞれC50H68N14O16S2、C51H70N14O16S2、および

C52H72N14O16S2と決定し、

nazumazoles A–Cは分子式がCH2ひとつずつ異なる同族体であった。1H NMRおよび13C NMRを測定したところ、アミド水素およびアミドカルボニル炭素のシグナルが観測されたことから、1–3はペプチド性の化合物であることがわかった。各種二次元NMRの解析により、構成アミノ酸およびその配列を決定した (Figure 3)。

1–3の構成アミノ酸はa-ケト-b-アミノ酸であるケトノルバリン (Knv)、および、ケトロイシン(Kle)、4-メチルプロリン (MePro)、ホルミル化されたジアミノプロピオン酸 (N-CHO-Dpr)、システイン、アラニンとオキサゾールが結合した構造 (AlaOX) であった。また、1–3は2種のペンタペプチド鎖

A) -Knv-MePro-N-CHO-Dpr-Cys-AlaOX-とB) -Kle-MePro-N-CHO-Dpr-Cys-AlaOX-の二量体であり、分子式の違いはこれらペプチド鎖の組み合わせに由来していた。

Table 1. 1H and 13C NMR data for the mixture of nazumazoles A (1)–C (3) in DMSO-d6.

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© 2015 天然有機化合物討論会電子化委員会
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