天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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不斉形式的アザ[3+3]付加環化反応を鍵工程とするピペリジンアルカロイド類の合成研究
塩見 慎也菅原 絵里香石川 勇人
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抄録

【序論】

 自然界には高度に置換された光学活性ピペリジン環を有する天然物が数多く存在する。我々はその中でC4位がアルキル基で置換された非対称ピペリジンアルカロイドに着目した。例えば、血圧降下作用が報告されているa-スキタンチン(1)や抗マラリア薬として、また近年は高機能有機触媒として注目されているキニーネ(2)などである1), 2)。このようなアルカロイド群を網羅的に合成する上で、高度に置換された光学活性ピペリジン環の自在な構築を可能とする力量のある方法論の開発が求められる。我々は多置換ピペリジン環を合成するにあたり、ジヒドロピリドン誘導体3が有用な合成素子として機能すると考えた。すなわち、3の有するエナミン構造、エステルおよびアミド構造を活かした化学変換によりピペリジン環上に自由度の高い置換基導入を行う。このような戦略のもと、有機触媒を用いた形式的アザ[3+3]付加環化反応による3の効率的合成法を独自に開発することとした。近年、高い不斉誘起能を持つ2級アミン型触媒は大きな注目を集めており、本触媒反応を鍵工程とする優れた全合成が報告されている。一方で、通常の有機触媒反応はその触媒量が10〜20モル%であり、触媒量低減化が課題であった。今回、我々は0.1モル%の触媒量で成される形式的アザ[3+3]付加環化反応を開発し、その手法を用いてa-スキタンチン(1)の効率的全合成を達成した。

【形式的アザ[3+3]付加環化反応の開発】

 ジヒドロピリドン誘導体3の合成戦略をScheme 1に示す。アルキル側鎖を有するa, b-不飽和アルデヒド4とマロナメート誘導体5をプロリン由来の不斉有機触媒存在下、形式的アザ[3+3]付加環化反応(マイケル付加/ヘミアミナール化反応)を進行させ、続いて脱水反応を行えば目的とする3が合成できると考えた。本触媒反応においてピペリジン環上のC4位にアルキル側鎖を導入するためには、基質として用いるアルデヒド4のb位にアルキル基が必須となる。しかしながら、4を基質とする触媒反応はシンナムアルデヒドのようなb位が芳香環のものに比べて報告例が極めて少ない。その理由として、生成するイミニウムカチオン中間体は不安定で5からの求核攻撃を受けずにエナミン体となり、これが自己縮合によって分解してしまう為である。一方で、アルキル側鎖を有するa, b-不飽和アルデヒドに対する不斉マイケル付加反応が既に報告3)されており、反応条件を精査すれば目的とする形式的アザ[3+3]付加環化反応が開発できると考えた。

モデル基質としてフェニルペンテナール7を求電子剤に用い不斉触媒反応の検討を開始した(Table 1)。求核剤としてマロナメート8を用い、トルエン中でジフェニルプロリノールシリルエーテル触媒Aを作用させたが、望む付加環化反応は全く進行せずにアルデヒド7の消費のみが観測された(entry 1)。これは懸念した通り不安定なアルデヒド7と触媒から生成するイミニウムイオンが8の求核攻撃を受けずに自己分解した結果である。種々の反応条件を検討したが、目的とする11を効率的に合成するには至らなかった。そこで、所望する反応を円滑に進行させるにはより高い

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