天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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1,4-ナフトキノン二量化反応の開発とナフトキノン二量体天然物の全合成研究
加茂 翔伍吉岡 快倉持 幸司椿 一典
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抄録

 

【背景・目的】 Juglocombin A (1)、B (2)、Juglorescein (3) 及び Juglorubin (4) は放線菌 Streptmyces sp. 815 及びGW4184 から単離された (Figure 1)[1]。これら天然物は、 1,4-ナフトキノン単量体である Juglomycin C (5) を構造単位に有しており、共通の生合成経路を経由して生産されると推定されている (Scheme 1)。つまり Juglomycin C が分子間-分子内連続マイケル付加により二量化した後、酸化されることで Juglocombin A 及び B が生じる。続いてエノール化及び酸化を経た後、脱水と Grob 開裂が進行することで Juglorubin が生合成されると提唱されている。また、Juglocombin B がエポキシ

化された後、水分子が付加することで Juglorescein が生じると考えられている。

これら天然物は高度に酸素官能基化された興味深い構造を有しており、潜在的な生物活性や機能が期待される。しかし単離報告以来 10 年以上が経過するが、合成法や活性・機能、生合成仮説の検証など関連分野の研究は未だ全く未着手である。またこれら天然物は平面構造が報告されているのみであり、絶対立体配置は決定されていない。そこで我々はこれら天然物の合成法の確立と絶対立体配置の決定を目指し、研究に着手した。

【Juglomycin C 誘導体の二量化反応の開発[2]

生合成仮説に基づきJuglomycin C 誘導体の二量化反応を検討した。種々の反応条件を検討したところ、誘導体 6 に対し、塩化メチレン中、酸素存在下に DBU を用いた際、二量体 7 が得られることを見出した (Scheme 2)。また収率改善を目指し基質検討を行った結果、エステル部位を還元し、水酸基を保護した基質を用いることで収率が向上した (Table 1)。特に MOM 及び TBS を保護基に用いた基質 8c において、収率 73% で二量体 9c が得られることを見出した。

【合成計画】

開発した二量化反応を用い、まずJuglocombin A 及び B の合成を計画した (Scheme 3)。単離者らは、不安定なJuglocombin A 及び B を共通の誘導体である 1ʹ-O-Methyljuglocombin B dimethyl ester (10) へと変換し、安定に単離、構造決定を行っている。この化合物 10 は二量体 9c のエポキシド部位の還元および側鎖官能基変換により合成できると考えた。また化合物 9c は開発した二量化反応を用い、光学活性 Juglomycin C 誘導体 8c から合成する。この二量化前駆体はナフタレン誘導体 11 の酸化により合成する。また化合物 11 は、l-アスパラギン酸と1,5-ナフタレンジオールより収束的に合成する。

【二量体 19 の合成】

1,5-ナフタレンジオール由来の化合物 12[3] から Grignard 試薬を調製し、l-アスパラギン酸由来のエポキシド[4]とカップリングすることで化合物 11を得た (Scheme 4)。次に二級水酸基の保護および酸化によりナフトキノン骨格を構築し、二量化前駆体 8c を合成した[5]。これを塩化メチレン中、酸素雰囲気下に DBU で処理し、二量体 9c を収率 73% で立体選択的に得た。

続いてエポキシドの還元を行った。Juglocombin A 及び B の合成には、このエポキシドを二重結合へと還元し、ナフトキノン骨格を構築する必要がある。そこでエポキシドを二重結合へと変換する反応につい

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© 2015 天然有機化合物討論会電子化委員会
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