抄録
【背景】コチレニンA (1)は、植物成長調整物質としてCladosorium sp.から単離されたジテルペン配糖体である1。1は、前骨髄性白血病細胞に対して分化誘導活性を示す。さらにINF-と併用することで種々のがん細胞に対し
てタンパク質間相互作用に基づく腫瘍増殖抑制活性を示す2。このため1は新規抗がん剤として注目されているが、1の生産菌の継代培養が途絶えているため、化学合成が供給手段の一つである。しかし、これまでに1のアグリコンであるコチレノール2の全合成については報告されているものの3、1の全合成は報告がない4。今回我々は、1および2の不斉全合成を達成したので報告する。
【合成計画】1は、糖フラグメント3とアグリコンフラグメント4とのグリコシル化反応を経由して合成し、4はケトン5からの変換を考えた(Scheme 1)。5の8員環はパラジウムを用いたメチルケトン6の分子内アルケニル化反応5により構築し、6は不斉合成によりそれぞれ調製したA、C環フラグメント(7, 8)からカップリングを経由して合成する計画を立てた。
Scheme 1. Retrosynthetic analysis of cotylenin A (1)
【A環フラグメントの合成】市販の9とメシチルメチルスルホンのジアニオンの反応と続くジアゾ基の導入がワンポットで行えることを見出し、9から10を77%で得た(Scheme 2)。次に当研究室で開発した触媒的分子内シクロプロパン化反応6とシクロプロパン環の開環反応も溶媒を代えることによりワンポットで行えることを見出し、10から12を81%で得た。12は再結晶により99% eeとした。次に12から7へ