天理医学紀要
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症例報告
異時性両側乳癌治療後に発症したt(9;11)(p22;q23)治療関連白血病の1例
日和 良介飯岡 大前迫 善智中村 文彦西村 理岸森 千幸奥村 敦子大野 仁嗣
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2011 年 14 巻 1 号 p. 52-58

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抄録

症例: 64歳女性.15年前,左乳癌のため左乳房全摘術.27か月前,右乳癌のため右乳房部分切除術の後,FEC療法(フルオロウラシル,エピルビシン,サイクロフォスファミド),放射線照射(50 Gy),ドセタキセル療法を受けた.今回は労作時呼吸苦を訴えて救急車で来院した. 検査結果: ヘモグロビン4.5 g/dl,血小板1.3×104/μl,白血球1,200/μl,芽球70.0%.骨髄は正形成で芽球86.3%.芽球は細胞質豊富で,ペルオキシダーゼ8%陽性,非特異的エステラーゼ陰性,CD11c+, CD13+, CD14, CD33+, CD36.核型は46, XX,t(9;11)(p22;q23)FISHMLL遺伝子のスプリットシグナル,RT-PCR AF9-MLL融合mRNA を認めた. 治療経過: イダルビシン+シタラビン,ミトキサントロン+シタラビンによる化学療法で寛解に至った.しかし,経過中に上室性・心室性期外収縮,心室性頻拍をきた した.近々,非血縁者間同種骨髄移植を行う予定である. 考案: 本症例は,化学放射線療法後短期間で発症,単球様の形態,t(9;11) (p22;q23)転座から,トポイソメラーゼⅡ阻害剤による治療関連白血病と考えられる.治療歴からエピルビシンが責任薬剤であろう.乳癌化学療法による治療関連白血病の頻度は0.37%と報告されているが,両側乳癌患者での発症率は報告されていない.一方,アンスラサイクリンによる心毒性は心不全だけでなく不整脈も報告されており,本症例も該当する

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© 2011 公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
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