2011 年 14 巻 1 号 p. 65-72
水疱性類天疱瘡は,後天性の自己免疫性水疱症で,主に皮膚を侵す疾患である.粘膜類天疱瘡では時に食道粘膜に病変を生じるが,水疱性類天疱瘡では稀である.水疱性類天疱瘡を発症し,上部食道粘膜に血疱,全周性の潰瘍を生じた82歳の日本人男性の症例を経験したので,報告する.食道潰瘍の形成は抗BP180抗体の抗体価に相関し,食道病変が水疱性類天疱瘡そのものによることを示唆した.抗BP180抗体陽性の水疱性類天疱瘡における食道病変については,日本人における数例しか報告がなく,それらの報告についてまとめた.