2015 年 18 巻 1 号 p. 31-35
症例は9歳女児.ノロウイルス感染後,嘔吐が続いたため外来受診した.2か月で6kgの体重減少が認められたため,精査加療目的で入院した.上部消化管造影では食道の拡張はなく,食道,胃,十二指腸の蠕動は良かったが,食道から胃への通過遅延がみられた.検査結果から食道アカラシアの疑いは強くはなかったが,下部食道括約筋圧が高い可能性があったため,食道アカラシアの薬物治療であるニトログリセリン舌下錠を開始したところ,作用が持続する20 ~30 分は嘔吐なく食事摂取でき,体重の増加傾向がみられた.しかしニトログリセリン舌下錠の効果は限定的であったため,原因精査のため上部消化管内視鏡検査を施行した.食道胃接合部は固く狭窄しており,内視鏡の通過時に出血を認めた.内視鏡検査実施後,ニトログリセリン舌下錠を中止したが,嘔吐回数が減り食事摂取が可能となった.本症例ではノロウイルス感染後に逆流性食道炎による下部食道狭窄をきたし,内視鏡検査によりブジー効果がみられたと考えられた.