天理医学紀要
Online ISSN : 2187-2244
Print ISSN : 1344-1817
ISSN-L : 1344-1817
症例報告
1 番染色体長腕のtandem triplication [trp(1)(q21q32)]を認めた骨髄異形成症候群の2例
中川 美穂奥村 敦子津田 勝代笹井 恒雄大野 仁嗣
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 18 巻 1 号 p. 23-30

詳細
抄録

 1番染色体長腕(1q)のtandem triplication [trp(1)(q21q32)]を認めた骨髄異形成症候群(MDS)の2例を報告する.
症例1: 60代男性.肺癌の術前検査で血小板減少と単球増多が認められた.骨髄は低形成で,芽球0.4%,単球24.3%,顆粒球系と赤芽球系に軽度の異形成を認めた.染色体分析では,分析した全ての分裂中期核にtrp(1)(q21q32)を認め,3番染色体短腕の構造異常を伴っていた.核型は,46,XY,trp(1)(q21q32),add(3)(p25)[20]であった.
症例2: 50代女性.咳嗽が続くため受診,画像検査と気管支肺洗浄検査で肺胞蛋白症が示唆された.血液検査では 汎血球減少と少数の芽球が認められた.骨髄は過形成で,芽球3.0%,3系統に異形成を認め,MDSのrefractory cytopenia with multilineage dysplasiaに該当した.核型は46,XX,trp(1)(q21q32)[20]であった.
FISH 解析: Vysis TCF3/PBX1 dual fusion probeを用いたFISHを行ったところ,trp(1)(q21q32) 染色体上で1q23に位置するPBX1シグナルが3個連続していた.間期核は,赤(PBX1) シグナル4個,緑(TCF3) シグナル2個のパターンを示した.
考案: 1qのgainは造血器腫瘍にしばしば認められる二次的な異常であるが,今回の2症例では,単独異常(症例2)または1個の特異性のない異常を伴うのみ(症例1)であったことから,trp(1)(q21q32)はMDSのprimary cytogenetic changeの一つと考えられた.

著者関連情報
© 2015 公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
前の記事 次の記事
feedback
Top