天理医学紀要
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平成31年度・令和元年度受賞
iPhone を用いた顔面神経麻痺評価アプリの開発
長谷部 孝毅堀 龍介児嶋 剛岡上 雄介藤村 真太郎鹿子島 大貴田口 敦士庄司 和彦
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キーワード: 顔面神経麻痺, iPhone, アプリ
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2020 年 23 巻 1 号 p. 50-51

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抄録

【目的】顔面神経麻痺疾患において,予後予測,治療効果判定のために正確な評価が必要である.誘発筋電図(electroneurography; ENoG)などの電気生理学的評価方法の他に,柳原法などに代表される顔面各部位の動きを評価し,その合計で麻痺程度を評価する主観的評価方法が簡便であり広く使われている.しかしながら,顔面表情の動きを見た目で評価する方法は複数あるものの,いずれにも共通する欠点として,あくまで主観的評価のため検者間で差異が生じる可能性がある他,各部位は3 段階評価のため,わずかな改善などを点数では評価しきれないという点が挙げられる.それらを解決する方法として,画像解析による評価方法はいくつか報告されているが,解析の手間や装置の問題などから広くは使われていない.一方で,近年米Apple 社の販売するスマートフォン(iPhone X 以降) は,その認証方式として顔認証を用いており,顔面運動を正確に捉えることが可能である.そこで我々は,顔面神経麻痺に対する客観的かつ簡便な評価方法を確立することを試みた. 【方法】iPhone XS を用いて検証した.各顔面の部位の動きを係数化し最大値を取得し,左右の比較を行うことで顔面神経麻痺を評価するアプリを作成した.それを用いて外来受診した顔面神経麻痺患者の評価を行い,主観的評価法との比較,及びENoG,積分筋電図との比較を行った. 【結果】アプリでの評価は既存の主観的評価方法と相関しており,特に頬,鼻翼,口角では強い相関が見られた.また,ENoG では相関関係が見られなかったものの,積分筋電図でも相関が見られた. 【結論】デバイスは一般に普及しているため,臨床応用に向けての素地は整っており,目的としていた客観的かつ簡便な評価アプリは開発出来た.顔面の動きの捉え方は,病態生理に基づきさらなる検証およびアップデートが必要ではあるが,非耳鼻科医,さらに言えば患者本人でも現状評価を行うことができるようになることが期待される.

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© 2020 公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
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